「突然訴状が届いたけどどうすればいいの? 」
「少額訴訟は無視しても大丈夫?」
あなたはそんなふうに悩んでいませんか?
裁判所から少額訴訟の訴状が届いた際に無視をしてはなりません。なぜなら、原告の主張がそのまま通るからです。とはいえ、どのように対応するのが正解なのかわからない方も多いでしょう。
この記事では以下について解説します。
- 少額訴訟の概要
- 少額訴訟の流れ
- 正しい対応方法
対応方法を間違えなければ、少額訴訟を起こされても恐れる必要はありません。ぜひ最後まで読んでみてください。
Contents
少額訴訟とは規模の小さな事件の解決方法
裁判制度には通常の裁判とは異なり少額訴訟と呼ばれる方法があります。少額訴訟は個人間の金銭トラブルや業者相手に裁判を起こすけど賠償額が少ないといった小さな規模の事件で行われます。
ここからは少額訴訟の条件や通常の裁判との違いについて見てみましょう。
60万円以下の金銭の支払いを求めるケースで利用される
少額訴訟とは、民事訴訟法第368条第1項にあるように、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限って利用できる訴訟手続です。
簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
引用元:民事訴訟法|e-Gov
そのため、個人間のトラブルのように賠償金が多額ではないケースで利用されます。たとえば、家賃を滞納したケースや友人とのお金の貸し借りといったケースです。
なお、60万円以下の支払いには利息や遅延損害金は含まれません。貸金業者から借りた60万円を滞納していて、利息や遅延損害金が発生していた場合は、それらも含めて少額訴訟を起こされます。
訴額が60万円を超える場合は通常訴訟の扱いになります。
審理が1日で終了する
一般的に裁判と聞くと、何回もやり取りを行ううちに、判決が出るまで数ヶ月〜数年かかるイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか?
しかし、少額訴訟の審理はわずか1日で終了します。
通常訴訟のように審理の時間が短い理由は、訴額に見合った時間と労力で解決を図るために、手続きをできるだけ簡易的にしているからです。
一般的な裁判では、費用も高く判決が出るまで長い時間が必要です。しかし訴額が少ないにもかかわらず、費用が高く裁判が長期化すると、原告・被告双方にとって利用しにくくなります。
そこで、少額訴訟では、口頭弁論を1日で済ませて判決の言い渡しも当日中に行います。
なお、少額訴訟と通常訴訟では、以下の点が異なります。
- 申し立てられる事件に制限がある
- 利用回数に制限がある
- 証拠・証人の取り調べは、1回の期日で実施できるものに限定される
- 反訴ができない(訴えられた事件で過払い金の返還を求めることができない)
- 被告から通常訴訟への移行を求められたら原告は拒否できない
- 通常訴訟と異なり「分割払い」の判決を言い渡すことができる
- 少額訴訟の判決に対しては控訴できない(異議申立てのみ)
少額訴訟を無視すると原告の主張が通りやすくなるので注意
裁判所から書類が急に届くと、驚く方がほとんどです。
裁判所の訴状は絶対に無視しないでください。なぜなら、訴状を無視すると、原告の主張がそのまま判決に反映されるからです。
訴えの内容が強制執行であれば、審理の後に執行されるので注意が必要です。
なお、答弁書を提出すれば、裁判を欠席しても勝てる見込みはあります。裁判では、答弁書に記載した内容をあなたが主張したと判断されるからです。
したがって、原告側があなたの主張を退ける証拠を提出できなければ、勝てる可能性があるでしょう。
少額訴訟の流れを解説
裁判所から書類が届いた時点では、これからどのような流れで裁判が進むのか、イメージがわかない方がほとんどでしょう。
少額訴訟に臨むのは不安と感じる方がほとんどです。少額訴訟は以下の流れに沿って行われます。
- 原告が少額訴訟の手続きを行う
- 裁判所が書類を審査し、あなたに訴状などを送付
- 書類が届くので答弁書作成と証拠集めをする
- 各書類を裁判所に提出
- 期日までに準備を行う
- 審理を行う
- 裁判官が判決を言い渡す
順番に解説します。
1.原告が少額訴訟の手続きを行う
まず原告側が少額訴訟の手続きを行います。原告は以下の3つの書類を被告(訴えられるあなた)の住所地を管轄する簡易裁判所へ提出します。
- 訴状
- 証拠
- 資格証明書か登記簿謄本(当事者に法人が含まれるとき)
この時点では、まだあなたは少額訴訟を起こされている事実を知らないでしょう。
2.裁判所が書類を審査し、あなたに訴状などを送付
続いて裁判所が原告から届いた書類を審査します。
訴えが認められれば、あなたに「訴状」「期日呼出状」「証拠書類」を送付します。
3.書類が届くので答弁書作成と証拠集めをする
そして、あなたのもとに裁判所から書類が届きます。この時点で、はじめて少額訴訟をされた事実を知ります。
訴状に対する自分の主張を書いた答弁書を作成し、少額訴訟で勝つために証拠になる書類を集めなければなりません。
また、少額訴訟に応じるか通常訴訟に移行するか判断する必要があります。
なお、少額訴訟の当事者の多くは弁護士を雇いません。しかし、どう対応すればよいのかわからない場合や書類の準備が1人では難しい場合は、弁護士への無料相談をおすすめします。
4.各書類を裁判所に提出
書類と証拠が集まったら裁判所に提出しましょう。提出期限は、訴状と一緒に届く書類に記載されているので、必ず確認しておいてください。
5.期日までに準備を行う
続いて期日までに追加の証拠書類の準備を行い、証人に連絡をします。
6.審理を行う
期日になったら裁判所へ出頭し、裁判官と当事者同士による審理が行われます。
裁判官は双方の言い分を聞いて判断します。証拠書類は、審理当日に調べられるものだけが採用されるので注意してください。
証人尋問も当日法廷にいる方しか認められません。
7.裁判官が判決を言い渡す
審理にはおおむね30分〜2時間前後かかります。審理終了後、裁判官がその場で判決を言い渡します。
なお、少額訴訟の制度でも話し合いによる和解で解決を図るのは可能です。
少額訴訟された際に勝訴するための3つのポイント
少額訴訟されたからといって、必ず訴えた原告側が勝つわけではありません。正しく訴訟に対応すれば、勝てる見込みもあります。
そのためには、以下の3つのポイントを把握しておきましょう。
- 「答弁書」を提出する
- 少額訴訟か通常訴訟に移行させるか決断する
- 弁護士に相談して助言をもらう
順番に解説します。
1.「答弁書」を提出する
まず答弁書を期限までに提出しなければなりません。訴状には「答弁書」が同封されています。
答弁書を書く際は、ひな形の案内(質問事項)に沿って記入しましょう。
ただし原告の言い分を認めるような書き方をしてしまうと、そのまま判決の内容に組み込まれてしまうので注意が必要です。
相手の言い分が正しくない場合は「否認する」を使い、知らない場合は「不知である」と記載しましょう。
なお、一度相手方の主張を認めてしまうと、かんたんには撤回できません。
もし答弁書をみて「どう書いたら良いかわからない」ときは、弁護士、もしくは認定司法書士に相談したほうが良いでしょう。
2.少額訴訟か通常訴訟に移行させるか決断する
少額訴訟を起こされたら、すぐに「どう対応するか」を決める必要があります。
少額訴訟が実施されればその日のうちに判決が言い渡されるので、訴訟しながら様子を伺うのは不可能です。
考えられる選択肢は、以下の3つがあります。
- 通常訴訟に移行させる
- 少額訴訟のまま応訴する
- 口頭弁論実施までに債権者と和解する
借金問題の場合、選択肢のうち債権者との和解は難しいといえます。和解をするためには「一定額を返済する」「債権者が納得するような返済計画を提示する」必要があるからです。
債権者は提訴に踏み切った以上、そうかんたんには和解に応じません。
そうなると、少額訴訟か通常訴訟のどちらかを選ばなければなりません。
少額訴訟を選んだ方がよいケース
少額訴訟を選んだ方がよいケースは、以下の2つ。
- 分割返済を認めてもらえば、借金の残額を返済できるとき
- 原告の主張に誤りがあり、それを簡易に証明できる証拠があるとき
少額訴訟は通常の訴訟手続きとは異なり「判決の日から3年を超えない範囲内での分割払い」を命じる判決を言い渡せます。
つまり、分割で返済できるなら少額訴訟によって1日で決着がついたほうが都合がよくなります。
少額訴訟をする場合は、裁判所に提出する答弁書もしくは上申書に「現在の収支の状況」と「実行可能な分割返済の条件」を記載しておきましょう。
現在の状況については、下記の項目が記されていれば十分です。
- 毎月の収入額
- 1ヶ月の生活費
- 他の借金の合計額
- 毎月の借金の返済額
ただし判決で分割払いが認められても、その後の返済に延滞があれば強制執行されます。
任意整理で和解した場合のように、延滞後も交渉次第で猶予が得られるわけではありません。
任意整理については「任意整理のメリットとデメリット~債務整理で1番多い手続きの注意点」で詳しく解説をしています。
通常訴訟に移行した方がよいケース
一方で、以下のようなケースに該当するのであれば、裁判所に通常訴訟への移行を申し立てするのをおすすめします。
- 全く身に覚えのない支払いを請求されたとき
- 対応を検討するための時間が欲しいとき
- 遠くの簡易裁判所に提起され、口頭弁論期日に出席するのが大変なとき
- 債権者に対し過払い金の返還請求(反訴の提起)を行いたいとき
被告であるあなたから通常訴訟への移行を申し立てた場合、必ず通常の訴訟手続きに移行させられます。
通常訴訟手続きになれば、1回の期日で判決を言い渡されることはありません。そのため、じっくり証拠を集めるなど対策を練る時間も得られます。
3.弁護士に相談して助言をもらう
少額訴訟の対応に困ったら弁護士に相談するようにしましょう。
なぜなら、裁判手続きは間違えた対応をしてしまうと修正・取り消しが難しいケースが多いからです。
答弁書は一般人にも対応できるよう工夫されていますが、実際の判断には法律の知識が必要になることも考えられます。
記載すべき内容などがよくわからないときは、弁護士・認定司法書士にすぐ相談して、必要な助言をもらってください。
少額訴訟されても慌てず対応する
少額訴訟されても、無視してはなりません。裁判と聞くと訴えられた側が必ず負けるイメージを持っているかもしれませんが、勝てる可能性はあります。
答弁書など必要書類は必ず提出してください。
なお、少額訴訟にどう対応すればよいのかわからない場合は、弁護士へ相談してみましょう。無料〜1万円前後で相談でき、正しい対応方法についてアドバイスをもらえます。