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トラック運転手が債務整理をする前の注意点と方法

今回は、トラック運転手が債務整理する際に知っておいてもらいたいポイントについてお話します。

トラック運転手といっても、自営業の配送業者もいれば、お勤めのトラック運転手もいます。

また、近距離の「ルート配送」や、軽貨物配送の方もいれば、長距離トラックの運転手もいます。

自営の方であれば、「債務整理すると使用しているトラックはどうなるのか?」ということがやはり心配です。

トラックを失えば、収入がなくなってしまうからです。

お勤め、自営に関わらず長距離トラックの運転手であれば、ETCカードに注意が必要です。

債務整理するとクレジットカードに影響がでることがあるからです。

債務整理するといくつかのデメリットが生じることがあります。

しかし、正しい知識をもっていれば、事前に対応できることがたくさんあります。

債務整理を考えているトラック運転手の方は、この記事の解説を参考にしてみてください。

また、『自転車操業状態に陥っており、借りては返すといった生活が続いている。』

『宝くじでも当たらない限り、給料での返済は厳しいと理解しているが放置してしまっている。』

このような状態の方は、既にその借金を返済できる見込みはほぼありません。

手遅れになる前に、弁護士や司法書士に相談を行ってください。

 

それでは解説をしていきます。

債務整理のデメリット

最初に、債務整理の一般的なデメリットを確認しておきましょう。

債務整理すると次のようなデメリットが生じる可能性があります。

・信用情報に事故情報(ブラック情報)が5~10年間登録される
・事故情報が登録されている間は、新規の借金・クレジットカードの発行が難しい
・債務整理していないクレジットカードでも解約となる可能性がある
・ローンを債務整理すると一括返済もしくは代金未納の商品を引き上げられる
・銀行口座が凍結される場合もある(銀行カードローンを債務整理したとき)
・自己破産すると一部の職業で就業制限・資格制限・許認可の拒否(取消)となる
・自己破産すると生命保険を解約しなければならない場合がある

以上のようなデメリットがトラック運転手の方の場合に、どのような影響を与えるかということについて、これから説明します。

ブラック情報が登録される

金融機関の借金を債務整理することは、「信用上の事故」として取り扱われます。

そのため、債務整理をすると債権者である金融機関は、それぞれが加盟している指定信用情報機関のデータベースに「事故情報」を登録します。

よく「ブラックリストに載る」といわれるのは、「事故情報が信用情報機関のデータベースに登録されること」のことです。

事故情報が登録される期間は、次の通りです。

任意整理の事故情報は5年
個人再生・自己破産の事故情報は、貸金業者は5年
銀行の場合は、個人再生・自己破産の事故情報が10年登録される

個人再生・自己破産の事故情報の登録期間が、銀行と貸金業者(消費者金融・信販会社)とで異なるのは、それぞれが加盟している信用情報機関での取扱いルールが違うためです。

信用情報を保管している機関には、JICC、CIC、KBS(全国銀行個人信用情報センター)の3つがあります。

このうち、JICCやCICは、「自己破産・個人再生の情報」の登録機関を5年としています。

他方、KBSは、「官報掲載事項(自己破産・個人再生)」の保有期間を10年としています。

関連記事⇒債務整理をするとブラックリストに名前や住所が載るの?

新規の借金・クレジットカードの発行はできない

銀行・消費者金融・信販会社(クレジットカード会社)は、融資やカード発行の審査の際には、申込者の信用情報を必ず調査します。

申込者に信用事故があれば、審査に通過することは難しくなります。

特に個人事業主や法人の代表者の方が債務整理すると、今後の事業借り入れに影響がでることが予想されます。

金融機関が中小法人に融資する際には、法人代表者の信用情報を調査することが一般的だからです。

債務整理しなかったクレジットカードも解約される可能性がある

債務整理の対象となったクレジットカードは当然解約となり使えなくなります。

債務整理の対象としなかったカードは、当面は続けて利用することが可能です。

しかし、クレジットカード会社は契約期間中に顧客の信用情報を調査する場合があります。

これを途上与信といいます。途上与信の際に「他社を債務整理した事実」に気づいた場合には、クレジットカード会社の判断によっては、「解約される」可能性があります。

途上与信が行われるのは次のような場合です。

クレジットカードの支払いに延滞があったとき
キャッシング枠を利用しない
ショッピング枠の利用額が多い(利用残額が10万円を超える)とき
クレジットカードの新規申込みをしない

特に長距離トラックの運転手さんは、ETCカードの関係で「クレジットカードの解約は避けたい」と考えている人が多いでしょう。

解約のリスクを回避するには、途上与信を極力回避するほかありません。

ETCカードに注意

長距離トラックの運転手さんにとってETCカードはなくてはならないものでしょう。

運送会社にお勤めの運転手さんでもETCカードは個人名義を利用している方が多いと思います。

ETCカードはクレジットカードに付帯して発行されるので、クレジットカードが解約されれば、ETCカードもあわせて解約されてしまいます。

債務整理をすると、債務整理の対象としたかどうかを問わず、保有するクレジットカードはすべて解約されるリスクがあります。

仕事の関係で「毎月の高速代が高額」なので、途上与信を回避することが難しいこともあるでしょう。

途上与信されると「必ず解約される」というわけではありません。

「延滞がなく利用実績が良好」であれば、「他社の債務整理」に目をつぶってもらえるケースもあります。

しかし、「解約されるかどうかわからないのが不安」というときには、クレジットカード付帯のETCカードを「ETCパーソナルカード」に切り替える方法があります。

ETCパーソナルカードは、デポジット(保証金)方式のカードなので、クレジットカードではありません。

保証金がやや高額なのがデメリットですが、個人事業主や中小法人であれば、パーソナルカードよりも保証金の安い「ETC法人カード」を作成することも可能です。

関連記事⇒債務整理後のETCカード対策?自己破産や任意整理をしても使える?

債務整理するとトラックはどうなるのか

自営のトラック運転手にとってトラックは最も重要な商売道具です。

債務整理すると現在使用しているトラックがどうなるのかということについて、説明していきます。

債務整理におけるトラックの取扱いの結論を簡単にまとめると次のようになります。

トラックを失わないためには任意整理
個人再生では、トラックを手元に残せる可能性がある
自己破産すれば原則としてトラックを失う

トラックを手放さずに債務整理するには任意整理が最も確実

トラックの購入代金を「完済している場合」、「現在もローンを支払っている場合」のいずれのケースであっても、任意整理であれば、トラックを手放さずに債務整理することができます。

任意整理は、私的に債権者と話し合う方法で行う債務整理です。

つまり、「アコムの借金は債務整理するけど、トラックのローンは債務整理せずにそのまま支払い続ける」といったように「債務整理する借金」を自分で選ぶことができます。

借金の一部を債務整理することで、「借金の返済」と「トラックのローンの支払い」を両立させることができれば、トラックを失わずに済みます。

しかし、銀行や信販会社に「カードローン」と「トラックローン(や事業融資)」の両方があるときには、「カードローンだけを任意整理する」ことはできない場合があります。

どのような条件で任意整理に応じるかは、債権者の判断次第だからです。

「個別のケースでのどうなるか?」ということは、弁護士や司法書士に相談して確認してください。

任意整理については下記ページで詳しく解説をしています。

参考⇒任意整理のメリットとデメリット?債務整理で1番多い手続きの注意点

個人再生でのトラックの帰趨

任意整理は、「利息を免除する」ことで「借金を返しやすくする」債務整理です。

したがって、「借金が多額過ぎる」ときには、任意整理では借金を返せるようにならないことがあります。

そのような場合には、「個人再生」を裁判所に申し立てることで解決できる場合があります。

個人再生が認められると、法律の基準に従って借金の一部が減免されます。

たとえば、600万円の借金であれば、120万円まで減額してもらえる可能性があります(保有している財産状況により異なります)。

さらに、借金が900万円まで膨れあがったときでも、180万円まで減額してもらえる可能性があるので、かなり多額な借金を抱えた場合でも解決できる手続きといえます。

しかし、個人再生の利用には、次の点で注意が必要です。

個人再生では、「任意整理」のように「対象とする借金」を選べない
個人再生すると「リースで調達しているトラック」は必ず引き上げられる
個人再生すると「ローンの支払いの残ったトラック」は失う可能性がある

個人再生で最も注意すべきなのは、必ず「すべての債務」を対象にしなければならないということです。

つまり、任意整理のように「債務整理すると都合の悪い借金を除外する」ことができません。

トラックをリースで調達しているときに個人再生すると、トラックはリース会社に引き上げられます。

通常のリース契約は、「契約者が個人再生や自己破産すると契約は解除される」という契約になっているので、引き上げを回避することはできません。

トラックをローンで購入しているときも「債権者にトラックを引き上げられる」のが原則です。

トラックのローンでは、購入代金完済まで「所有権留保」がとられるのが一般的です。

「所有権留保」は担保権の一種とされているので、担保権者である所有者(ローン会社)は、個人再生に優先してトラックを引き上げる(別除権を行使する)ことができるのです。

しかし、例外的にトラックを手元に残せる場合がないわけではありません。

たとえば、次のケースのときには、個人再生してもトラックを手元に残せることがあります。

ローン債権者と「別除権協定」を提携できた場合
「車検証の所有者が販売会社」で「契約上の所有者がローン会社」である場合

ローン債権者と別除権協定を締結できた場合

個人再生は、「将来の収入」で借金の一部を返済し、残額の支払い義務を免除してもらう手続きです。

したがって、個人再生の成否は「収入の確保」にかかっているといえます。

トラック運転手が個人再生でトラックを失えば「収入源を断たれる」ことになってしまいます。

そこで、このような場合には、別除権者との間で「ローンをきちんと返済する代わりにトラックの引き上げを猶予してもらう」合意を取り付ける方法が考えられます。

これを別除権協定(弁済協定)といいます。

裁判所が別除権協定を許可すれば、それを盛り込んだ再生計画案を提出することができます。

別除権協定付きの再生計画案が認可されれば(他の債権者に反対されなければ)、個人再生を利用してもトラックを手放すことなく借金を返済することができます。

そもそもローン会社の別除権行使を拒絶できる場合

別除権協定を交わさなくても、ローン会社・販売店との契約内容によっては、「ローン会社による別除権行使」を拒絶できる場合があります。
最高裁判所で争われた事例では、個人再生においてローン会社による自動車の別除権行使を拒絶したケースがあります(最判平成22年6月4日民集64巻4号1107頁)。

このケースをごく簡単に説明すると、以下のような事案でした。

自動車ローン購入時に「ローン会社が所有権を留保する契約」であった

車検証の所有者名義人は「販売会社」のままであった

購入者が個人再生した際に、別除権を行使したのは「販売会社ではなく」、「ローン会社」であった

以上のケースで、上記最高裁判決は、「上記立替払をした者を所有者とする登録がされていない限り、販売会社を所有者とする登録がされていても、上記立替払をした者が上記の合意に基づき留保した所有権を別除権として行使することは許されない(判決文そのまま)」と判断したものです。

法律的に説明すれば、担保権の行使には「対抗要件」が必要であるとされています。

対抗要件というのは、「契約当事者以外の第三者に対しても権利を主張するための要件」です。

たとえば、住宅ローンの際に「抵当権が登記される」のは、対抗要件を備えるためです。

自動車には不動産のような登記制度はありませんが、「登録制度」があります。

そのため、「所有者としての表示を怠っていたローン会社は別除権の行使を許されない」と判断したのが上の最高裁判決です。

上記のケースと同様の契約状況にあるときには、個人再生をしてもローン会社によるトラックの引き上げを拒絶できる可能性があります。

しかし、現在の自動車(トラック)ローンの実務は、この最高裁判決を受けて変化しています。

現在のトラックローンでも購入代金を完済するまでは「販売会社名義」で登録されていますが、必ずしもローン会社によるトラックの引き上げを拒否できるとは限りません。

「販売店の別除権」を「信販会社が代位行使する」ことは可能だからです。

法律知識のない方が、車検証の表示のみで判断することは非常に危険です。

必ず債務整理の経験が豊富な弁護士・司法書士の助言を受けるようにしてください。

個人再生については下記ページで詳しく解説をしています。

参考⇒個人再生は家を残せる大きなメリットがあるが2つのデメリットもある

自己破産すれば原則としてトラックを失う

自己破産は「手続き開始のときに保有している財産」を拠出して「すべての債務を清算」する手続きです。

そのため、自己破産をすれば原則としてトラックを失うことになります。

ローンが残っているトラックは、別除権者に引き上げられてしまいます。

上で説明した個人再生の場合と同様に、ローン会社の引き上げを拒絶できる場合もあります。

しかし、自己破産の場合には、別除権者の行使を阻止できても、破産管財人によってトラックが処分されるので、結局「トラックを失う」ことになります。

自己破産してもトラックを失わずに済むケースは、「トラックの評価額」が20万円以下の場合に限定されます。

トラックの評価額が20万円以下になることは、「年式の古い小型トラック」を除いてはあまりないと思われます。

自己破産については下記ページで詳しく解説をしています。

参考⇒自己破産はメリットしかない?家族や子供、仕事にデメリットはないの?

債務整理するとトラック運転手をやめなければならないのか?

お勤めのトラック運転手の方は、「債務整理したら勤め先を解雇されるのではないか」と不安な方もいるかもしれません。

また、自営の方でも法人経営をしている場合には、「代表者(役員)の債務整理が会社に不利益を与えるのではないか」と不安な方もいるでしょう。

債務整理だけが理由で解雇されることはない

労働契約法の解釈としては、「借金があること」や「債務整理したこと」だけを理由に解雇することは、不当解雇であり許されないとされています(労働契約法15条・16条)。

したがって、債務整理をしたからといって運送会社などを解雇されることは通常はありません。

しかし、借金返済の金策などのために、「無断欠勤が続いた」、「配送遅延が続いた」といったことなれば、会社の事業に悪影響があるとの理由で懲戒や解雇の理由となることがあります。

また、運転中に「債権者からの督促の電話」に出たために事故を起こした場合にも処分される場合があるでしょう。

法人を営んでいる場合にも注意が必要

法人として自営しているトラック運転手の方は、自己破産に注意が必要です。

自己破産すると、株式会社の取締役、持分会社(合同会社)の代表役員を「退任する」必要があります。

特に1人会社であるときには、唯一の社員が退任すれば法人の清算事由にもなるので、特に注意が必要です。

またいわゆる「緑ナンバー」の許可との関係で、役員変更の届出が必要な場合もあるでしょう。

関連記事⇒法人の債務整理?会社が自己破産や個人再生をする流れと費用

廃棄物処理業者はさらに注意が必要

トラック運転手のなかには、廃棄物処理業者や廃棄物処理業者の従業員という方もいるでしょう。

廃棄物処理業者(の代表者)が自己破産すると、廃棄物処理業者(一般・特定・産業のいずれも)としての許可が取り消されます。なお、取消から5年経過しないと再度の許可は認められません。

また、従業員である場合にも、「自己破産して復権を得ない者」は、「政令が定める使用人(支店長等の地位)」に就くことができません。

自己破産しても生命保険を解約せずに済ます方法

自己破産すると、20万円を超える保険の解約返戻金があるときには、債権者への配当のために破産手続きに拠出する必要があります。

解約保険金のある保険の典型例は生命保険(養老保険)ですが、学資保険などの貯蓄性(解約返戻金)のある保険はすべて該当します。

トラック運転手は、生命保険に加入しづらい職業といえます。

特に中高年で既往症があるような、生命保険の再加入が難しい人の場合には、非常に困ります。

自己破産における保険の解約は、次の方法で回避することができます。

契約者貸付を利用して、解約返戻金の金額を20万円以下に減らす
解約返戻金に相当する金額を自分で積み立てて配当に充てる
生命保険受取人に介入権(保険法60条・89条)を行使してもらう
裁判所に自由財産の拡張を認めてもらう

「契約者貸付」で解約返戻金の額を減らす方法がよく用いられます。

しかし、解約の時期や貸付を受けたお金の用途は、裁判所から必ずチェックされます。

独自の判断で行わずに、弁護士の指示にしたがって対応するようにしましょう。

トラック運転手の債務整理まとめ

トラック運転手の債務整理には、難しい問題がいくつもあります。

特に自己破産となれば、使用しているトラックを失う可能性も高く、仕事を失うことにつながりかねません。

他方で、任意整理で解決できれば、仕事にほとんど影響を与えることなく借金問題を解決することができます。

借金問題は対応が遅くなるほど解決が難しくなります。

謝金の返済に行き詰まったときにはできるだけ早く、弁護士・司法書士に相談することをお勧めします。

また、「借金が多額でもう自己破産しかない」と思っているケースでも、個人再生で借金を解決できる場合も少なくありません。

諦めずに、事態がより深刻になる前に、弁護士・司法書士に相談しましょう。

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