「ギャンブルでの借金は自己破産できない」
あなたはそう思って諦めていませんか?
確かにギャンブルは自己破産における免責不許可事由のひとつであはありますが、実際にはギャンブルが原因の借金でも自己破産が認められることがほとんどです。
この記事では、競馬で作ってしまった借金を自己破産で解決した体験談をご紹介します。
いままさにギャンブルによる借金で苦しんでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
戸田さん(仮名) 30代男性、大阪府在住。
20代のころから競馬にのめり込み、多額の借金を抱えてしまう。
自己破産した結果、330万円の借金をゼロにすることに成功。
Contents
体験談: 競馬にのめりこみ330万円の借金を抱えてしまう
はじめまして、戸田です。大阪府在住の30代で、会社員をしています。
私は28歳のときに自己破産を経験しました。
就職して間もなく、競馬にのめりこむようになったのが借金の原因です。
はじめのうちは遊び程度で楽しめていましたが、次第に借金をしてまで競馬をするようになりました。
25歳の頃、借金が200万円ほどになってしまった私は、親に泣きついて借金を肩代わりしてもらいました。
しかし根本の原因であるギャンブルをやめられていなかったので、またお金を借りて競馬をしてしまい、気づけばさらに330万円もの借金ができてしまったのです。
当然自力では返済できませんし、流石にまた親に泣きつくわけにもいきません。
そこでインターネットで債務整理について調べ、自宅から近い法律事務所に相談に行ったんです。
自己破産するのには抵抗があったため、別の手段はないか相談すると、司法書士の先生から「個人再生」という方法を勧められました。
個人再生ならば330万円の借金が100万ほどに減るということを説明され、そこから返済計画を立てました。
「自己破産」と「個人再生」には、次のような違いがあります。
- 自己破産……借金をゼロにする。そのかわり、家や車など高額な資産が没収されるなどの制限もある。
- 個人再生……借金を5分の1から最大10分の1程度に減らす。マイホームなど高額な資産も手元に残すことができる。
戸田さんの場合は、就職していてある程度の借金返済能力があったため、個人再生での債務整理を勧められたようです。
個人再生を断念して、自己破産をすることに
返済計画をスタートさせた私ですが、すぐにトラブルに直面してしまいました。
ギャンブル癖の治っていない私は、司法書士の先生に支払う費用ですら、給料が入ってすぐ競馬で使ってなくしてしまう有り様だったのです。
こんな状況の私を見て、先生は契約解除まで考えられたそうです。
しかしなんとか私のために別の方法を考えようと言って下さり、個人再生ではなく自己破産をすることになりました。
個人再生をすれば借金は減りますが、それでも100万円の借金は残ります。
競馬癖のひどい私を見て、100万円の返済ですらできないのではないかと、きっと先生も不安になったのではないでしょうか。
自己破産ならば借金がゼロになりますので、もう返済する必要はなくなります。
ですが、自己破産するのにも一つ問題がありました。
自己破産しても「免責許可」というものが下りなければ借金は残ったままになってしまいます。
そして、私の借金の原因であるギャンブルは、免責許可が下りない大きな要因になるのです。
破産法には「免責不許可事由」と呼ばれるものが定められており、該当する場合は自己破産しても借金の支払いを免責しないとされています。
免責不許可事由の中には「浪費や賭博によって借金をしたこと」という項目があるので、厳密に言えばギャンブルによる借金は免責の対象になりません。
しかし実際には、ギャンブルによる借金であっても裁判所の判断で免責される場合がほとんどです。
免責不許可事由については、以下の記事でも詳しく解説しています。
⇨ 免責不許可事由の具体例と対策~消費やギャンブルは?判例から考える対応策
ギャンブルが原因の自己破産は、免責許可を得るための準備がとても重要
司法書士の先生からは、私が自己破産するためには慎重に準備をしなければならないと言われました。
先生と何度も打ち合わせをした結果、「借金の根本の原因はギャンブルだが、途中からそれを返すために借金を繰り返し、返済の為に生活が苦しくなり再び借金をした」という体で、裁判所に対して陳述書を提出することに決めました。
自己破産を申し立てるに当たっては、裁判所に「陳述書」という書類の提出が必要です。
陳述書には、破産を申し立てなければならない事情、家族構成やこれまでの職歴などを事実に沿って記述します。
ちなみに、債務整理を司法書士の先生に依頼してからすぐに、業者からの督促がなくなりました。
借金の返済も一旦ストップしましたので、生活がすごく楽になったのを覚えています。
債務整理を依頼してから約3ヶ月ほどで、無事に裁判所から免責許可が下りました。
どうしようもない自分に、司法書士の先生は向き合ってくれた
自己破産後も、はっきり言って完全にギャンブルを断ち切ることはできていませんでした。
先生への費用の支払いも終わっておらず、それどころか、生活費が苦しくなり先生に借金を申し出るほどでした。
そんなどうしようもない私に対して先生は、
「あなたはまだ若いからやり直せる。なんとかギャンブルから足を洗って頑張ってください」
と言って生活費を工面してくれたんです。
そこから私は、病院や自助グループに通い、本気でギャンブル依存から脱するための努力を始めました。
自己破産で借金がなくなったこともあり、それからの生活はとても安定したものになりましたね。
毎日お金に悩まされていた状況が改善されたおかげで、仕事にも精を入れて取り組めるようになりました。
自分が変われたのは良い先生に巡り合えたおかげ
私は素晴らしい司法書士の先生に巡り会えたおかげで、自分を変えて立ち直ることができました。
債務整理をどの専門家に依頼するか決めるのは難しいかもしれませんが、実際に法律事務所を訪れて話をしてみて、そのときの印象で決めるのが良いのではないかと思います。
また私のようにギャンブルが原因で借金を作った人は、たとえ自己破産してもギャンブルそのものを断ち切らないと再び借金をしてしまうおそれがあります。
債務整理だけではなく、ギャンブル依存症を治すための努力も必要だと心に留めておいてください。
免責許可が下りた当日、裁判所に出向いて裁判官から言われた言葉が今も胸に残っています。
「本来、ギャンブルでの借金は免責されません。
これがあなたの最後のチャンスです。」
債務整理は、借金が返せなくなった人が人生をやり直せる貴重な機会です。
それを忘れないようにしながら、今後は堅実な生活をしていこうと思います。
戸田さんが自己破産した体験談から学べること
戸田さんは無事に自己破産が認められ、新たな生活を始めることができました。
彼の体験談から学べることを2点まとめておきましょう。
ギャンブルによる借金でも自己破産はできる
戸田さんが借金を背負ってしまった理由はギャンブルでした。
破産法を厳密に解釈するならば、ギャンブルは「免責不許可事由」に該当し、自己破産しても支払い義務は免責されません。
しかし裁判所には「裁量免責」という権限が与えられており、免責不許可事由に該当しても裁判所の判断で免責にすることができます。
実際のところ、ギャンブルによる借金は、よほどの大金でない限りは裁量免責される場合がほとんどです。
返済の目処がまったく立たなくても、自己破産で解決できる可能性が高いので、あきらめず法律事務所に相談してみましょう。
免責不許可事由に相当する場合、書類の書き方に注意する必要がある
自己破産を申し立てる際には「陳述書」という書類を作成しなければなりません。
陳述書の書式は裁判所によって異なりますが、おおむね以下のような内容を記述します。
- 現在の収入
- 職歴
- 生活状況(浪費やギャンブルをしていないか)
- 多額の借金をしてしまった理由
- 借金が返せなくなった理由
※新潟地方裁判所の陳述書の書式がこちら(PDF)から確認できます。
すべて正直に記載しなければなりませんが、浪費やギャンブルといった免責不許可事由に相当する理由で自己破産を申し立てる場合は、陳述書の書き方に工夫が必要です。
単に「ギャンブルがしたいので多額の借金をしたら返せなくなりました。自己破産したいです」と書いてしまっては、やむを得ない事情だとはとても思われず、裁判所にとっても裁量免責する理由が見つけられません。
戸田さんのケースでは、司法書士のアドバイスに沿って「最初はギャンブルのためにお金を借りたが、その返済で生活が苦しくなり、今度は生活費のためにお金を借りてしまった」という内容にして、無事免責許可を得ることができました。
また場合によっては、債権者へのお詫びや今後の生活改善の決意を書いた「反省文」の提出を求められることもあります。
これらの書類を自分一人だけで作成するのはなかなか大変です。
専門家から助言をもらいながら作成したほうが、スムーズに免責許可を得ることができるでしょう。
まとめ:ギャンブル依存で借金があっても、債務整理すれば立ち直れる
競馬のために多額の借金を抱えるほど、ギャンブル依存の状態にあった戸田さん。
しかし良い司法書士の先生に巡り会えたおかげで、経済的にも精神的にも立ち直ることができたようです。
借金返済の目処が立てば、ギャンブル依存症の治療に取り組むための余裕も生まれます。
自分ひとりだけでなんとかしようとせず、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談するところから、解決への一歩を踏み出してみてください。