消滅時効の仕組みと債務整理

この記事では「消滅時効」の仕組みについて説明します。

借金が返せなくても困っている人の中には「もう消滅時効で逃げ切るしかない」と考えている人も多いのではないでしょうか。

実際、ウェブなどでは、「消滅時効の手続き」を引き受けてくれる専門家もたくさんいれば、「消滅時効で借金を帳消しにした体験談」を目にすることがあります。

しかし、一般の方が思っている以上に、消滅時効で借金を帳消しにすることは簡単ではありません。

そもそも、消滅時効の仕組みは、法律的にも技術的で、きちんと勉強をしていない人にとっては、わかりづらいものです。

正しい知識を持たないまま、「消滅時効で逃げ切ろう」と考えることは、非常に危険です。

単刀直入に、借金の時効まで逃げ切れること無理です。むしろ自ら状況を悪くしてしまっていると言わざるを得ません。

このような状況まで状態が悪化している方は、既に黄色信号が点滅している状態です。

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それでは解説をしていきます。

消滅時効制度とはどのような制度か

民法上の時効は、「ある事実状態が一定期間続くことで発生する法律上の効果」のことです。

民法上の時効には、次の2つがあります。

・取得時効:占有が一定期間続いたことで所有権を取得できる仕組み
・消滅時効:権利者が一定期間権利行使しなかったときに、権利が消滅する仕組み

このうち借金の問題と関係するのは、消滅時効の制度です。

消滅時効が問題となる具体的な場合

借金の問題と消滅時効は、次の2つの場面で問題となります。

・長期間債権者から借金の返済を請求されなかったとき(借金を返済しなかったとき)
・最後の取引から長期間過払い金の請求をしなかったとき

消滅時効の要件

「返済さえしなければ消滅時効が完成する」と思っている人はすくなくありません。

しかしそれは「勘違い」です。下で詳しく説明しますが、「ただ返済しない」だけでは時効は成立しません。

消滅時効を成立させるには、次の要件を満たしている必要があります。

時効事実が必要な期間継続していること(時効の完成)
相手方に対して時効援用をしていること

時効の完成

消滅時効の成立の前提として「時効の完成」が必要です。

「時効の完成」とは、「時効の基礎となる事実状態(時効事実)」が「一定期間継続した」ことをいいます。

民法は消滅時効について「債権は、十年間行使しないときは、消滅する」と定めています(民法167条1項)。

つまり、借金(や過払い金請求)の場面では、「債権者が10年間、支払いを求める行為(権利行使)をしなかったとき」に消滅時効が完成します。

「債務者が借金を返さないこと」と「債権者が権利行使しないこと」は法律では違う事実として区別されます。

「10年」の消滅時効」と「5年」の消滅時効

消滅時効の完成に必要な期間には、2つの仕組みがあります。

原則は、民法が規定する「10年」です。

「企業の営業行為」のような商行為には、民法よりも商法が優先して適用されます。

商法では、「商事債権の消滅時効は5年」と定められています(商法522条)。

「消費者金融やクレジットカードの時効は5年」といわれるのはこのためです。

なお、貸金業者には法人ではなく「個人」の業者も存在します。

商事債権であるかどうかは、「法人か個人か」ではなく、「商人か否か(商行為によって発生したかどうか)」が基準となります。

したがって、個人事業主の貸金業者からの借金にも「5年の短期消滅時効」が適用されます。

時効期間が10年よりも短い消滅時効のことを「短期消滅時効」といいます。

短期消滅時効には、商事債権の場合のほか、次のようなものがあります。

病院の診療費は3年(民法170条1号)
弁護士・司法書士報酬は2年(民法172条)
飲み屋等のツケは1年(民法174条4号)
DVDやCDのレンタル料は1年(民法174条5号)

参考⇒民法|e-Gov

「信用金庫」、「住宅支援機構」、「裁判で確定した支払い義務」は商事債権ではない

債権者がいわゆる金融機関であっても「5年の消滅時効」ではなく「10年の消滅時効」が適用されるものがあります。

「信用金庫」や「住宅支援機構」からの借り入れには、短期消滅時効は適用されません。

これらは金融機関ではありますが、「商人」ではないからです。

また、債権者が「商人」であったとしても、「訴訟」や「支払督促」によって「裁判上確定した支払い義務」となったときには、短期消滅時効ではなく「10年の消滅時効」が適用されます。

下で説明する「時効の中断」との関係で非常に重要です。

時効の起算日

「時効の完成」には、「事実の継続」が必要です。

それでは、「いつから」10年(5年)経過すれば時効が完成するのでしょうか。

時効の起算日は、「借金の返済日が決まっているかどうか」で次のように異なります。

返済日が決まっているときには、「返済しなかった返済日の翌日」が起算日
返済日が決まっていないときには、「借金した翌日」が起算日

消費者金融やクレジットカードのキャッシングにはあらかじめ「返済日」が決まっています。

したがって、時効の起算日は、返済日が毎月20日のときには、「返済しなかった返済月の翌日」である11日が時効の起算日となります。

「借金した日」や「最後に返済した日」(の翌日)が起算日ではありません。

勘違いしている人が少なくないので注意が必要です。

なお、時効の起算日が「翌日」となるのは、民法での日付の数え方は、「初日不算入」が原則となっているからです(民法140条)。

時効の中断

時効を完成させるためには、「債権者の権利行使が10年(5年)間継続して存在しない」ことが必要です。

債権者が「権利行使していない状態」は、具体的には「時効中断事由」の有無で判断されます。

「時効の中断」とは、「時効期間の計算を最初からやり直す(ゼロに戻す)」ことをいいます。

民法147条は、次の場合に時効が中断すると定めています。

債権者が請求したとき
債権者が差押え・仮差押え・仮処分をしたとき
債務者が債務を承認したとき

債権者が5年間全く請求しないことはあまりない

「消滅時効」は、「借金を返さなければ成立する」というわけではありません。

消滅時効は、「債権者の権利行使が長期間なかった」ときに成立するものです。

民法147条が定める「請求」とは、訴訟などの「法的手続き」を指します。

「口頭」で「返してください」と伝えるだけでは、時効を中断させる「請求」にはなりません。

なお、内容証明郵便による督促状などで請求の「催告」をしたときには、催告から6ヶ月以内に請求すれば、催告の時に時効が中断します。
実際の消費者金融や銀行、クレジットカード会社が5年間何の請求もせずに、延滞を放置するということは、債権額がごくわずかという場合を除いては、あまりありません。

債権額が10万円を超える場合には、何かしらの法的手段を講じるという債権者が多いようです。

訴訟を起こさなくても、「支払督促」という簡易な方法で請求することも可能です。

また、債務者の所在がわからなくても、公示送達すれば、裁判を起こすことは不可能ではありません。

ところで、訴訟で債務者の敗訴(借金の返済義務)が確定したときには、判決確定の翌日から「10年の消滅時効」に切り替わります。

5年の消滅時効完成間際になって債権者が訴訟提起したときには、消滅時効完成まで15年以上かかる場合もあります。

債務承認とは?

時効は、債権者が請求したときに加え、「債務者が債務の存在を認めたとき」にも中断します。

債務者に「借金を返済する意思があるとき」まで消滅時効を認める必要はないからです。債務承認に該当する行為の例は次の通りです。

債権者から請求されて債務の一部を支払うこと(利息の支払いも含まれる)
債権者から請求されて「債務を認める念書」を交わすこと
債権者から督促されたときに、「返済を待ってほしい」と願い出ること

なお、時効が完成した後であっても債務を認めると不利益が生じます。

時効完成(5年もしくは10年経過)後に、債務承認すると原則として「時効援用権」を失います。この点は、下で詳しく説明します。

時効の援用

消滅時効が完成しただけでは、借金の返済義務はなくなりません。

時効の効果を発生させるためには、「時効の援用」という行為が必要です(民法145条)。

時効の援用とは、「時効の法律効果(権利の発生・消滅)による利益を受ける」ということを相手方に意思表示することをいいます。

時効の援用の方法は特に決められているわけではありません。したがって、口頭で債権者に伝えることでも援用は可能です。

しかし、実際には、後日に「言った、言わない」のトラブルになることを防ぐために、「内容証明郵便」で行うことが一般的です。

内容証明郵便で時効の援用を行うときには、下記の事項を記載する必要があります。

・債権(返済義務を消滅させる借金)を特定できる情報(契約番号・借入日・借入額)
・消滅時効が完成していること(起算日から時効期間が経過していること)
・消滅時効を援用すること(「上記の債権について消滅時効を援用する」と記載すればよい)
・時効援用者(債務者)を特定できる情報(氏名・生年月日・住所)
・通知書送付の日付

なお、「時効完成前」に援用をしても何の効果も生じません。「援用の予約(予告)」といったことはできません。

したがって、消滅時効で借金を踏み倒すときには、「時効の起算日」、「時効中断事由発生の有無」を正しく把握しておくことが重要です。

時効完成前に援用通知をしてしまっては、債権者に自らの居所を知らせるだけになってしまうからです。

消滅時効完成後に返済すると、時効を援用できなくなる

「時効が完成した」からといって安心しきってはいけません。

時効完成後に債務承認すると「時効援用権を失う」のが原則です。

時効が完成したにもかかわらず債務者が債務承認すれば、債権者に対して「借金を返済してもらえる」という期待を与えることになるからです(最判昭和41年4月20日民集20巻4号702頁)。

しかし、近年の裁判例では、「債権者を保護する必要がない」と評価できるときには、時効完成後に債務承認したケースでも時効援用を認めるものがあります。

たとえば、次のようなケースでは、時効完成後に債務承認していても、消滅時効を援用できる可能性があります。

・債権者から返済を「強要された」場合
・「数千円程度の金額を1回だけ返済した」という場合
・債権者が「消滅時効の完成を知っていた」にもかかわらず返済を請求してきた場合
・債務者が「消滅時効の制度」を全く知らなかった場合
・最後の返済から「20年を超えるような長期間が経過」してから請求された場合

なお、「債務承認後であっても時効援用したい」というケースでは、最終的には裁判で決着を付けることがほとんどでしょう。

できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

消滅時効で借金を踏み倒すのは簡単ではない

ウェブなどをみると「消滅時効で借金を帳消し」といった情報に接することがあります。

しかし、実際に消滅時効で借金を踏み倒すことは、簡単ではありません。

時効が完成するかどうかは「債権者の行動」に左右されるので、「ただ返済しなければよい」というものではないからです。

また、借金の返済義務を認める判決が確定すれば、時効完成までさらに10年必要となります。

最大で15年も借金を放置するリスクの方が大きい場合の方が多いでしょう。

さらに、消滅時効を援用すると、信用情報に傷がつく可能性もあります。

時効援用時には、「該当する信用情報がすべて消去」される場合と「貸し倒れ」として登録される場合があります。

信用情報が消去されれば、過去の延滞情報もすべて消去されます。しかし、「貸し倒れ」は事故情報なので、登録から5年間消去されません。

多くのケースでは消去してもらえるようですが、「消去しなければいけない」という決まりはありません。

結局は「債権者の対応次第」ということになります。

消滅時効で借金の問題を解決するのは、「不確実なこと」が多すぎるので、やはりリスクが高いというほかありません。

関連記事⇒借金から逃げる方法はないが、詐欺罪で警察に捕まる事や裁判になる事はある

過払い金請求の多くは消滅時効完成間近

借金を抱えている人にとって、消滅時効の問題は、「返済義務をなくす」だけの制度ではありません。

過払い金の請求権にも消滅時効があります。過払い金返還請求権の時効は、「最後の取引から10年」で成立します。

金融機関のほとんどは2008年までに違法金利(グレーゾーン金利)での貸付をやめています。

したがって、すでに完済した借金についての過払い金返還請求の多くは時効完成間近といえます。

「2008年以前から現在まで取引が継続している」借金であれば、時効完成まで猶予がありますが、実際にそのような借金は多くないでしょう。ご心配な方は、できるだけ早くに弁護士・司法書士に相談するとよいでしょう。

関連記事⇒過払い金請求の時効はいつまで?5年、10年と言われるその真相は?

消滅時効まとめ

消滅時効で借金を踏み倒すことは簡単ではありません。

何よりも「債権者の出方」に左右されることが多すぎるので、危険な行為ともいえます。

延滞を続けても、債権者が法的手続きをとれば、それまでの時効期間のカウントはすべて無駄になります。

その場合残るのは、「莫大な遅延損害金」だけです。

また、「夜逃げ」の状態にあれば、「債権者が請求したかどうか」を正しく把握することも難しくなります。

時効が中断していることに気づかずに援用すれば、それまでも苦労も台無しになります。

「返せないのだから時効で逃げ切るしかない」と思っている借金でも債務整理で解決できることは少なくありません。

消滅時効で借金を踏み倒そうと考えている方は、まず弁護士や司法書士に債務整理の相談をしてみてください。

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