債務整理をすると「信用情報」に「事故情報」が登録されてクレジットカードを発行してもらえなくなります。
任意整理の際、対象とせずに手元にクレジットカードを残しても、近い将来に止められてしまうでしょう。
ただし債務整理をしても、一生クレジットカードを使えないわけではありません。
今回は債務整理後にもクレジットカードを使う方法や有効な代替手段をご紹介します。
カードを使えなくなるのが心配で債務整理をするかどうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
1.債務整理をするとクレジットカードを発行してもらえない
債務整理をすると、借金問題は解決できますが「クレジットカード」を使えなくなるのが大きなデメリットとなります。
債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類がありますが、どの手続きを利用した場合でもクレジットカードを利用できなくなるのは同じです。
このように債務整理によってカードを利用できなくなるのは「信用情報」に「事故情報」が登録されるためです。カード会社は審査の際に「信用情報」を参照するので、債務整理した事実を知られて審査に通らなくなってしまうのです。このように信用情報に事故情報が登録された状態を、一般的に「ブラックリスト状態」などといいます。
ネット上で「審査がゆるい」として有名なカードであっても、債務整理したらまず審査に通る可能性はありません。
2.任意整理で対象にしなかったカードも止められる
任意整理の場合、すべての債権者を対象にする必要はありません。使い続けたいカードがあれば、任意整理の対象から外すことも可能です。
確かに手続きの対象から省けば、しばらくの間はそのカードを使い続けられるでしょう。
しかしカード更新や途上与信(カード会社が不定期に行う顧客の与信審査)の際に、事故情報をみられてしまいます。結局はそういった機会にカードを停止されるので、ずっと使い続けられるわけではありません。
任意整理でカードを外しても、結局は「近い将来に使えなくなる」と考えてください。
3.債務整理しても信用情報に傷がつかないケース
実は債務整理をしてもブラックリスト状態にならず、クレジットカードを停止されないケースがあります。
それは「過払い金」が発生していた場合です。
過払い金とは、過去に利息制限法による制限利率を超える高い利息を払っていた方が、払いすぎた利息をいいます。
2008年頃より前は、多くの消費者金融会社やカード会社がキャッシングサービスにおいて、利息制限法を超える高利率で貸付を行っていました。その後の最高裁判例によって、そのような高い利息を払う必要はないと判断されたので、消費者は払いすぎ利息を「過払い金」として取り戻せるようになったのです。
過払い金は、借金返済中でも請求できます。また当初は「任意整理」として債務整理手続きを開始しても、利息制限法に引き直して計算すると「過払い金」が発生していると判明するケースが少なくありません。
そういった場合、「借金はすでに完済している」扱いとなるので、信用情報に事故情報は登録されず、ブラックリスト状態にならずに済みます。
通常一般の人と同様に、クレジットカードの審査にも通りますし、過払い金請求した以外のカードであれば継続利用が可能です。
債務整理中に過払い金請求する場合の注意点
債務整理の手続き中に過払い金請求する場合、以下の点に注意しましょう。
過払い金請求の対象にしたカードは利用停止になる
過払い金請求をしても信用情報に事故情報は登録されず、ブラックリスト状態にはなりません。ただし「過払い金請求の対象にしたカード」は止められます。
そのカードでスマホ代や光熱費などの引き落としをしていたら、事前に支払方法を変更しておきましょう。
またそのカード会社では自社ブラック情報(カード会社独自のブラックリスト)に登録されるので、その後もずっと審査に通らない可能性が高くなります。過払い金請求後にカードを使いたいなら、別のカード会社へ発行を申し込みましょう。
ショッピング債務と相殺される
クレジットカードで過払い金請求できるのは、キャッシング債務のみです。ショッピング債務については、2008年以前から取引していても過払い金が発生しません。
もしもショッピング枠に残債があれば、キャッシングの過払い金と相殺されます。
たとえキャッシングで過払い金が発生してもショッピングの残債の方が高額であれば、残債が残って支払いが必要となり、任意整理したのと同じ結果になります。
その場合、信用情報に事故情報が登録されるので注意しましょう。もちろんカードは使えなくなりますし、ブラックリスト状態になるので別のカード会社でもカードを作れません。
間違って事故情報が残ってしまうケースがある
借金返済中に任意整理から始まって過払い金請求する場合、まれに間違って信用情報に事故情報が残ってしまうケースがあります。
その場合、対象のカード会社へ申し入れをして、信用情報機関へ情報の抹消登録の連絡を入れるよう要請しなければなりません。
放っておくとブラックリスト状態が継続し、カードを作れない状態になってしまいます。
もしも信用情報に間違って事故情報が残ってしまった場合、弁護士に手続きをご依頼ください。適切に対応してスピーディに情報を消去いたします。
4.債務整理後にクレジットカードを利用する方法
債務整理後にクレジットカードを利用する方法は、主に以下の2つです。
- 一定期間の経過後にクレジットカードを作る
- 家族カードを利用する
それぞれについてみていきましょう。
4-1.一定期間の経過後にクレジットカードを作る
債務整理をしても、一生信用情報に事故情報が残るわけではありません。一定期間が経過すると情報は消去されます。
事故情報が消去されたらブラックリスト状態ではなくなるので、またクレジットカードを発行してもらえる状態に戻ると考えましょう。
4-2.事故情報が消去されるまでの期間は5年程度
事故情報が消去されるまでの期間は、おおむね手続き後5年程度です。
任意整理を行った後5年程度が経過すれば、また新しくクレジットカードを発行してもらえる可能性があります。
ただし銀行系のクレジットカードの場合にはKSCの情報を参照されるので、10年程度クレジットカードを作れない可能性があります。KSCでは「自己破産」と「個人再生」の情報を10年間登録されることになっているためです。
以上をまとめると、「任意整理をした場合」や「銀行系以外のクレジットカードを利用する場合」には、手続き後5年程度で発行してもらえる可能性が高いと考えましょう。
4-3.債務整理後にクレジットカードの審査に申し込む手順
債務整理後5年程度が経過してクレジットカードの審査に申し込むときには、以下のような手順で進めましょう。
信用情報の開示請求をする
カード発行の審査に申し込む前に、各信用情報機関に対して信用情報の開示請求をしましょう。
開示を受けると、自分の信用情報の内容を確認できます。ここで事故情報が消えていることを確認してから審査に申し込むようにしてください。事故情報が残っているのに審査に申し込んでも、ほぼ確実に落とされるので意味がありません。
信用情報の開示請求は信用情報機関によって異なり、郵送や窓口申請、WEB上やアプリなどで可能となっています。
念のために3つの信用情報機関へ情報開示請求をして、最低限JICCとCICで情報が消えていることを確認してからカード発行を申請するのがよいでしょう。
審査のゆるそうなカードを探す
債務整理後はじめてカードを申請するなら、できるだけ審査のゆるそうなカード会社を探すようお勧めします。
クレジットカード会社にもいろいろなものがあり、各社によって審査基準が異なります。
たとえば消費者金融系や流通系のカードなどは比較的審査がゆるいとされています。
年会費無料のカードは比較的審査のゆるいものが多数です。
一方で年会費の高いカードや銀行系のカードは審査が厳しいケースが多いので、避ける方がよいでしょう。
1社ずつ申請する
クレジットカードの発行を申し込むときには、「1社ずつ」申請してください。
ときどき、多数のクレジットカード会社へ一気に申し込む方がいますが、そういったことをするとすべてのカード会社で審査に落とされやすくなります。カードの申込情報も信用情報機関で半年程度、保管されるからです。
1社申し込んで落ちてしまったら、半年程度が経過してからあらためて別のカード会社へ申し込みましょう。
過去に債務整理の対象としたカード会社は避ける
クレジットカードの発行を申し込むとき、過去に債務整理の対象にしたカード会社は避けましょう。
カード会社はそれぞれ「過去に迷惑をかけられた顧客のリスト」を作っているケースが多いためです。
こういったカード会社独自のブラックリストを「自社ブラックリスト」などといったりします。自社ブラックリストに載っている以上、そのカード会社に申請しても審査に落とされる可能性が濃厚です。
過去に債務整理の対象にしたカード会社以外のカード会社に申し込みをしてみてください。
キャッシング枠をつけない
クレジットカードを申し込む際には「キャッシング枠」をつけるかどうか選べるケースが多いでしょう。このとき、キャッシング枠はつけない方が審査に通りやすくなるのが一般的です。
キャッシング枠はいわゆる「借金」なので審査が厳しくなる傾向があります。借金の総量規制も適用されますし、一定以上の金額になると収入証明書が必要になるケースも少なくありません。
最初の一枚はショッピング機能だけにして、利用と支払いを続けてカード利用の実績を作っていきましょう。その上で、必要に応じてキャッシング枠を付与してもらう方法がおすすめです。
4-4.家族カードを利用する
債務整理後、5年の機関を待たなくても使えるクレジットカードがあります。それは「家族カード」です。
家族カードは、本会員の信用にもとづいて家族のために発行してもらえるカード。カードの表記名は家族(利用者)の名前になるので、ネット通販などで「本人名義のカードが必要」な場合でも利用できます。
本会員の信用情報に問題がなければ、家族がブラックリスト状態でも家族カードの発行は受けられます。配偶者や親など、信用情報に問題のない家族がいる方は、家族カードを発行してもらって使わせてもらいましょう。
ただし家族カードを使いすぎると本会員である家族に迷惑をかけてしまいます。節度をもった使い方を心がけてください。
5.クレジットカードと同様に使えるカード
以下で紹介する2種類のカードはクレジットカードと同様に使えて便利です。ブラックリスト期間中でも発行してもらえるので、家族カードを頼める家族がいない方などはぜひ利用してみてください。
5-1.デビットカード
デビットカードは利用と同時に利用料金が引き落とされるカードです。クレジットカードと同じようにVISAやMasterなどのブランドがあり、コンビニやネット通販、量販店などで利用できます。
デビットカードの場合、カード会社による審査が入りません。ブラックリスト状態でも発行してもらえるので、債務整理直後でも利用できます。
銀行で発行してもらえるので、普段取引している金融機関へ申し込んでみるとよいでしょう。
5-2.プリペイドカード
プリペイドカードは、先にお金を入金しておくカードです。プリペイドカードもクレジットカードと同様にスーパーやコンビニ、ネット通販などで利用できます。
信用情報の審査は行われないため、ブラックリスト状態でも問題なく発行してもらえます。
たとえば「auPAYプリペイドカード」やオリコプリペイドカード、VISAプリペイドカード、ANAプリペイドカードなどがあるので、1枚作っておくとよいでしょう。
6.クレジットカードの審査に通りやすい人とは?
債務整理後にクレジットカードの審査に通るには、カード会社の設定する条件をクリアしなければなりません。事故情報が登録されていなくても、各カード会社の基準を満たさなければ審査に落とされてしまいます。
ただクレジットカードの審査は住宅ローンほど厳しくはありません。主婦などでも通る可能性が十分にあります。
できるだけ、以下のような属性を身につけておくと有利になるので、押さえておきましょう。
- 年収が高いと有利
- 勤務先や職業の信用性が高いと有利
- 雇用形態は正社員が有利
- 勤続年数が長いと有利
- 住居の状況は持ち家が有利
- 独居より同居家族がいる方が有利
すべてについて完璧な条件を身につけるのは困難ですが、カード申請前にできるところから属性を高くしておくとよいでしょう。
7.ブラックリストを恐れずに債務整理で借金問題を解決しよう!
債務整理をしても、デビットカードや家族カードを使えればさほど不便を感じないで生活を実現できます。また債務整理後5年程度が経過すれば、また自分の名義でクレジットカードを利用できる状態に戻ります。
債務整理をせずに借金を放置していると、支払いを滞納して督促を受けますし、いずれは長期滞納によって信用情報に事故情報が登録されてしまうでしょう。そうなったら、債務整理をしなくてもブラックリスト状態になってしまいます。
借金はできるだけ早く、きちんと整理しておくべきといえます。
当事務所では債務整理や信用情報の回復手続きに積極的に取り組んでいますので、借金問題や信用情報に関してお悩みのある方はお気軽にご相談ください。