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自己破産の流れを分かりやすく解説

この記事では、自己破産の流れについて、3つのステップにわけて解説します。

自己破産から免責がおりるまでの流れは、「相談から申立て」まで、「自己破産の手続き」、「免責の手続き」の3つにわけて捉えることができます。

実際に自己破産をするときには、弁護士に依頼することが必須です。

弁護士に依頼せずに自己破産を申し立てた場合には、受け付けてもらえない場合があるだけでなく、「少額管財が利用できない(予納金が高くなる)」などの不利益を受ける場合があります。

弁護士に依頼した場合でも、それぞれの段階で依頼人自身の役割が重要となる場面があります。

ウェブ上には、「同時廃止の事件は自己破産も簡単」という説明をしているサイトもありますが、現在の自己破産は、決して簡単に借金を免除してもらえる手続きではありません。

手続き実施に協力しないときには免責不許可となることも少なくありません。

自己破産を失敗しないためには、弁護士に依頼する場合でも自己破産の流れについて正しく把握しておくことが大切といえます。

「自己破産をしようと思っているけど、手続きがよくわからない」、「自己破産するとどうなるかわからない」から自己破産することに躊躇を感じている人は、この記事の解説を参考にしてください。

また、『自転車操業状態が続いており、借金完済が厳しい事は心の中では分かっている。』

『給料が出ても結局、月末になると借りてしまう生活が1年以上続いている。』

このような状況まで状態が悪化している方は、既に黄色信号が点滅している状態です。

手遅れになる前に、今すぐに法律事務所に相談を行ってください。

 

それでは解説をしていきます。

自己破産はどのような手続きか

下のフロー図は、自己破産の手続きの流れを簡単にまとめたものです。

弁護士(や司法書士)に借金問題を相談し裁判所の免責決定が下されるまでは、大きく3つのステップ(黄色のゾーン、赤色のゾーン、緑色のゾーン)に分けることができます。

 

自己破産は、厳密に言えば、「借金の返済を免れるため」の手続きではありません。

最も厳格な意味での自己破産手続きは、「財産を負債の強制清算」を目的とした手続きです。

したがって、自己破産しただけでは借金の返済義務は免除されません。

また、借金の返済義務を免除してもらうためには、自己破産後に「免責」を受ける必要があります。

「自己破産」と「免責」は本来的には別個の手続きですが、実際には一体的に取り扱う運用がとられています。

相談から自己破産申し立てまでの流れ

債務整理に限らず、弁護士や司法書士に業務を依頼するときは必ず相談からはじまります。

自己破産を検討する人には、弁護士や司法書士の相談料すら払えないと思っている人も少なくないかもしれません。

しかし、いまでは多くの弁護士(司法書士)事務所で借金の相談を「無料」で受けることができます。

自己破産する場合に限らず、借金問題は早期対応が非常に重要です。

「借金の返済が苦しい」と感じたときには、できるだけはやく借金問題に詳しい弁護士・司法書士に相談しましょう。

最近では、ウェブを利用すれば多くの弁護士・司法書士の情報に接することができます。

なかには、「電話のみ、メールのみで依頼可能」という事務所もありますが、注意が必要です。

弁護士や司法書士には、依頼を受ける際には「必ず依頼人と直接面談しなければならない」という実務上のルールがあります。

弁護士や司法書士が直接面談をせずに依頼を受ける事務所には、ヤミ金と関わりの深い危険な事務所(提携弁護士・司法書士)も存在するので注意が必要です。

自己破産をはじめとする債務整理は、依頼人である債務者にとっては人生でも特に重大な案件です。

また、債務整理は「どの弁護士・司法書士に頼んでも結果は同じ」とは言い切れない依頼内容でもあります。

慎重に検討した上で納得・信頼できる弁護士・司法書士と契約することが大切です。

なお、自己破産を申し立てる際には、「代理人を頼めるのは弁護士のみ」です。

司法書士(認定司法書士の含む)には、破産手続きの代理権はありません。

司法書士に依頼するときには、申立書などの書類作成を代行してもらえるのみになります。

裁判所によっては、司法書士による書類作成代行では「少額管財」を利用できない場合もあります。

受任通知送付

弁護士・司法書士に債務整理(自己破産)の依頼をすると、ただちに債権者宛に「受任通知」と呼ばれる書面を送付します。

この受任通知が送付されると、次の2つの効果が発生します。

債権者は個別に借金を取り立てることが禁止される
債務者は個別に借金を支払うことを禁止される

受任通知を送付することは、「もはや約定返済が難しくなった(支払不能の状態)」ことを債権者に宣言する行為でもあります。

この場合、残った借金の帰趨は債務整理の結果に委ねられることになります。

したがって、「債権者が他の債権者に抜け駆けて取り立てる」ことも、「債務者が一部の債権者にだけ返済する行為」のいずれも禁止されます。

特に、自己破産する場合には、受任通知送付後に返済行為があると免責を受けられない場合があるので、注意が必要です。

「知り合いの借金だけコッソリ返しておこう」ということも当然禁止です。

関連記事⇒受任通知と債務整理の関係?支払いや督促が止まる流れとメリット

負債の調査と申立て準備

弁護士(司法書士)は、受任通知の送付とあわせて「取引履歴」の送付を債権者に対して請求します。

この取引履歴に基づいて借金の状況を正確に把握します。

そのため、「抱えている借金の額がわからない」場合でも債務整理を依頼することは全く問題がありません。

また、依頼人は「自己破産しかない」と思い込んでいる場合でも、借金の額と収入状況によっては、「自己破産以外の債務整理の方が有利」ということもあり得ます(逆の場合もあり得ます)。

弁護士(司法書士)とじっくり検討した上で、最も有利な債務整理の方法を選択しましょう。

自己破産を利用するときには、裁判所に提出する「申立書」、「財産目録」、「債権者一覧表」といった必要書類の作成にかかります。

保有する財産状況や、債権者の情報は、依頼人であるあなたしか知らない情報がたくさんあります。

提出した書類の記載内容に不備があると、自己破産で不利益を受ける場合があります。

悪質な財産隠しや債権申告漏れは、免責不許可となることもあります。弁護士には、隠し事をしないで、すべてを正しく伝えなければいけません。

自己破産手続きの流れ

自己破産の申立ては、申立人が居住している地域(住民票上の住所地ではありません)を管轄する地方裁判所(またはその支部)に行う必要があります。

自己破産の申立てには、次の書類が必要です。

自己破産申立書
免責申立書
陳述書
債権者一覧表
資産目録
家計状況の報告書

現在の実務では、「自己破産の申立て」と同時に「免責の申立て」も行うのが一般的です。

それぞれの地方裁判所ウェブサイトで提供される申立書のひな形も自己破産申立てと免責申立てが一体となっています。

陳述書は、自己破産申立て後の手続き(破産審尋・免責審尋)の資料として用いられる書証(書面の証拠)です。

通常は、申立人自身の概略(生年月日など)や借金の原因や状況、自己破産申立てに至るまでの経緯(債権者との話し合いの有無など)について記載します。

「債権者一覧表」、「資産目録」、「家計状況の報告書」は、財産・負債の調査のために必要な資料です。

なお、これらの書類の記載に不備があると、自己破産の手続きで不利益を受けることがあります。

破産手続き開始決定

自己破産を申し立てる2週間後までを目安に「破産審尋」が開催されます。

破産審尋では、申立人を「本当に自己破産させるべきかどうか」について審理します。

なお、東京地方裁判所では、自己破産を申し立てた当日(もしくは数日以内)に、破産審尋を行う即日面接を利用できる場合があります。

通常のケースでは、破産審尋の翌週には「破産手続き開始決定」が下されます。

破産手続き開始決定によって、次のような法律上の効果が発生します。

申立人は、破産手続き開始決定によって破産者となる
破産者となることで、破産者に対する義務・各種制限が発生する
破産者に対して破産手続きが開始されたことが官報で公告される
破産手続き開始決定の時点で破産者が保有する財産は差押えられる
破産手続き開始決定より後に得た収入は自由に使うことができる

同時廃止事件と管財事件

自己破産の手続きの進め方には、「同時廃止」と「管財」の2つのやり方があります。

「手続きの廃止」とは、手続きの目的を達成できずに終了する場合のことをいいます。

破産手続きは、破産者の財産と負債を強制的に清算するための手続きです。

破産者に財産がないときには清算(配当)することができません。

そのため、破産者に「20万円以上の財産がないとき」には、自己破産の手続きを「開始と同時に廃止する」決定をします。

これに対して、手続き開始後に廃止となる場合を「異時廃止」とよびます。

債権者に配当できるだけの財産を破産者が保有しているときには、財産を換価して債権者に配当する必要があります。

この場合の破産事件を「管財事件」と呼びます。実際の換価・配当の業務は、裁判所に選任された破産管財人によって実施されます。

ところで、手持ち財産がない場合でも「問題のある自己破産」では管財事件となることがあります。

たとえば、「財産隠し」や「不公平な弁済行為(偏頗弁済(へんぱべんさい))」が疑われる場合には、破産管財人を選任して問題行為についての調査を行わせる必要があります。

また、借金が「浪費」などの問題のある理由による場合にも、破産管財人を選任して裁量免責の可否を調査させる必要があります。

「財産さえなければ自己破産は同時廃止で簡単に終わる」というのは正しい説明とはいえないので注意が必要です。

財産の換価・配当

財産の換価・配当は、破産管財人によって行われます。実際の換価の方法は財産の種類よって異なります。

たとえば、不動産であれば「競売」による売却が原則ですが、より有利な条件で売却が可能なときには、「任意売却」での処分が認められる場合もあります。

なお、配当のために差し押さえられた財産でも、実際の換価が難しい場合には、破産管財人によって破産財団(配当原資となる財産の集合体)から放棄される場合があります。

たとえば、山林や農地のように売却の難しい不動産は、放棄される場合も少なくありません。

破産管財人から放棄された財産は自由財産となり、破産者が自由に処分することができます。

自己破産手続きの終了と免責手続き

同時廃止の場合には、同時廃止決定によって破産手続きは終了します。

管財事件の場合には、債権者集会の実施、債権者への配当を経て裁判所が「破産手続終結決定」をすることで、自己破産の手続きは終了します。

自己破産は、清算のための手続きに過ぎません。

自己破産は支払不能のときだけ認められる手続きであるので、手続きが終了しても必ず借金が残ります。自己破産の手続きが終了しても免責を受けなければ、借金の返済義務はなくなりません。

自己破産しても免責されない場合がある

自己破産の申し立ては、借金の返済義務を免除してもらうために行う場合がほとんどです。

しかし、自己破産すれば「当然に免責される」というわけではないことに注意が必要です。

破産法は、破産者に一定の事由があるときには免責不許可とすることを定めています。

この一定の事由のことを「免責不許可事由」といいます。

・「財産隠し」や財産の価値を不当に減少させる行為(財産の破損行為)
・不当な債務負担(クレジットカードの現金化など)
・偏頗弁済(特定の債権者だけに不公平な返済をすること)
・借金の原因や借金の額に問題がある場合
・すでに返せないことがわかっていながら債権者を騙してお金を借りた場合
・裁判所に提出する財産状況に関する帳簿や書類を隠滅・偽造・変造した場合
・虚偽の債権者名簿を提出した場合(記載忘れの場合も含まれます)
・破産手続における調査や説明を拒否した場合や虚偽の説明をした場合
・暴力などの不正の手段により、破産管財人などの職務を妨害した場合
・過去7年以内に破産免責もしくはそれと同等の法的救済を受けている場合
・破産法が定める破産者の義務(破産法40条・41条・250条)などに違反した場合

関連記事⇒ギャンブルの借金は債務整理できる?賭け事での負けを自己破産する方法

免責可否を判断する審理

破産者に免責を与えるかどうかは、裁判所の審理によって判断されます。

同時廃止となったときには、裁判所で開催される免責審尋によって審理が行われます。

免責審尋は、裁判所によって、破産者ごとに個別に開催される場合と複数の破産者に対する免責審尋が同時に開催される場合とがあります。

なお、弁護士に自己破産を依頼している場合であっても、免責審尋には「破産者本人の出席が必要」となることがほとんどです。

裁判所に無断で免責審尋に欠席したときには、「それだけで免責不許可となる可能性がある」ので注意が必要です。

同時廃止となったときには、破産手続き中に実施される債権者集会が免責審尋を兼ねる場合がほとんどです(したがって管財事件では免責審尋は実施されません)。

この場合の債権者集会へも破産者本人の出席は必須となります。

免責不許可事由があっても裁判所の裁量で免責を受けられる

実際に自己破産が申し立てられるケースには、何かしらの免責不許可事由に該当している場合が少なくありません。

免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所は裁量によって免責を与えることができます(破産法252条2項)。

これを「裁量免責」とよんでいます。

したがって、「ギャンブルで作った借金だから免責されない」と破産手続きに非協力的な態度をとってはいけません。

実際の破産事件で免責不許可となるのは、数パーセント程度に過ぎません。

また、最近の傾向では、破産手続きへの協力拒否を理由に免責不許可となるケースが増えているようです。

なお、免責不許可事由があるときには、免責判断に必要な調査を破産管財人が実施して裁判所に報告します。

そのため、破産者本人が破産管財人と直接面接しなければならない場合があります。

事案によっては、日記や家計簿の提出を破産管財人から指示される場合もあります。

自己破産しても免責を受けられなければ意味がありません。

裁判所・破産管財人に協力し、指示に従うことが免責を得るために何よりも大切です。

免責確定と復権

裁判所による免責決定が下されると官報で公告されます。官報公告(の翌日)から2週間後までに債権者などから異議が述べられなければ、免責は確定します。

通常は、免責決定に債権者が異議を述べることはほとんどありません。

免責が確定すると「復権」により破産者ではなくなります。

破産手続き開始決定により生じた資格制限などは、免責確定による復権によってすべてなくなります。

なお、免責を得た借金は、法律上の返済義務がなくなりますが、借金それ自体が消滅するわけではありません。

したがって、免責後に任意で返済することは可能です。

知人や親族からの借金をどうしても返したいというときには、免責確定後(破産手続き終了後)に任意で返済するようにしましょう。

免責不許可となった場合の復権

免責不許可となった場合には、借金の返済義務がなくならないので、自己破産とは別の方法で借金問題を解決する必要があります。

実際には、個人再生を申し立てて解決を図るケースが多いでしょう。

個人再生では、借金に問題があった場合でも、借金の一部を減免してもらえることがあるからです。

なお、免責を得られなかった場合でも、破産法255条1項が定める次の事由に該当すれば、復権することができます。

債権者の同意による破産手続廃止の決定が確定したとき
再生計画認可の決定が確定したとき
破産手続開始の決定後、詐欺破産罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき

「自己破産の流れ」まとめ

自己破産は免責を受けなければ、申し立てた目的を達成することができません。

免責を得るためには、自己破産を申し立てた本人が手続きの中できちんと役割を果たすことがとても大切です。

破産免責には、「破産手続きの実施に協力した破産者への恩恵」という側面も含まれているからです。

自己破産は絶対に失敗することができません。

自己破産する際には、破産手続きの流れを正しく把握して、弁護士や破産管財人の指示に必ず従うようにしましょう。

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