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今回は、「家族の借金問題に気づいたときにどのように対応すべきか」ということについて解説します。

テレビや映画などでは、借金の返済を家族に求めるシーンが描かれることがあります。

家族の借金に返済義務が生じるのはごく限られた場合だけのことです。

アコムやプロミスといった消費者金融や、銀行のカードローンは「無担保・保証人なし」の融資です。

したがって、家族が返済する義務を負うことはありません。

また、消費者金融や銀行は、連帯保証人ではない家族に取り立てを行うことも禁止されています。

とはいえ、家族の借金はやはり気になります。

特に同居の家族の借金が深刻化すれば、あなたの生活にも何かしらの悪影響がでないとも限りません。

家族だから「何とかしてあげたい」、「力になりたい」と思うこともあるでしょう。

その他方で、借金の問題はプライバシーにもかかわるデリケートな問題といえます。

対応を間違えたことが、借金問題を解決させるどころか、深刻化させてしまうことだってあります。

また、『現在の収入から考えて、完済は厳しいという事を本人も家族も頭では分かっているけど放置してしまっている。』

『過去にも借金問題で家族の手助けを受けた経験があるのに、また同じ問題を繰り返してしまう。』

このような状態の方は、既にその借金を返済できる見込みはほぼありません。

また、今回は家族の協力で乗り切れたとしても同じ過ちを繰り返してしまうだけです。

手遅れになる前に、弁護士や司法書士に相談を行ってください。

それでは解説をしていきます。

家族の借金に返済義務が生じる場合

家族の借金に返済義務が生じるのは、下に挙げる場合に限られます。

家族の借金の連帯保証人となっている場合
未成年の借金に法定代理人が同意した場合
夫婦の日常家事債務
借金を相続した場合

連帯保証人となっている場合

家族の借金の連帯保証人や保証人となっているときには、家族の借金であっても返済義務が生じます。

連帯保証人と保証人は、名前は似ていますが負うべき責任の程度は全く違います。

よく勘違いされているので注意が必要です。

ただの「保証人」であれば、主たる債務者が借金を返済できないことが確定した場合のみ返済義務が生じます。

保証人は債権者に対して「検索の抗弁権」、「催告の抗弁権」を有しているからです。

簡単に説明すれば、「催告の抗弁権」とは、「まずは主たる債務者(家族)に督促してください」といえる権利です。

「検索の抗弁権」は、「まずは主たる債務者の財産を差し押さえてください」といえる権利です。

これに対し、連帯保証人には、催告の抗弁権と検索の抗弁権が認められていません。

つまり、連帯保証人がいるときには、債権者は、主たる債務者と連帯保証人のうちの「請求しやすい方から返済してもらえる」ことになります。

連帯保証人になるということは「自分が借金したことと同じ」なのです。

一般の方が「保証人」と言う場合のほとんどは、実際には「連帯保証人」のことなので注意が必要です。

なお、消費者金融や銀行のカードローンは、無担保融資が原則です。

したがって、通常であれば、債務者の家族がアコムやプロミスからの借金の連帯保証人になっていることはありません。

連帯保証人については、下記の記事で詳しく解説をしています。

参考記事⇒債務整理と連帯保証人?自己破産や任意整理をした場合の影響と対策

未成年の借金に法定代理人が同意した場合

未成年者は、単独で法律行為(契約締結など)をすることが制限されています。

未成年が借金を申し込む際に、法定代理人が同意していたときには、法定代理人にも返済義務が生じます。

万が一、法定代理人の同意無しに未成年者が借金をしたときには、法定代理人はこれを取り消すことができます。

なお、未成年者が消費者金融や銀行カードローンの融資を受けられることは、通常はあり得ません。

未成年者はカードローンの審査対象外(利用条件を満たさない)だからです。

夫婦の日常家事債務

連帯保証人などになっている場合を除いては、他人の借金の返済義務を負うことはありません。

しかし、夫婦関係があるときには、例外的な取扱いとなる場合があります。

収入レベルの程度に応じた衣食住のためにした夫(妻)の借金(日常家事債務)は、妻(夫)にも返済義務が生じます(民法761条)。

日常家事債務の負担は、離婚しても消滅しません。

なお、ギャンブルや浪費を理由とした借金は日常家事債務ではないので、配偶者の返済義務は生じません。

借金を相続した場合

借金を抱えていても「死んでしまえば返済義務はなくなる」というのは大きな勘違いです。

相続は、プラスの資産もマイナスの資産も区別せずにまとめて相続するのが原則です。

したがって、親が借金を残して亡くなったときには、借金も相続しなければなりません。

住宅ローンなどは、完済前に債務者が亡くなった場合でも相続人に引き継がれないことがありますが、これはローンの残額を保険(団体信用保険)で処理するためです。

住宅ローンを抱えている人のすべてが団体信用保険に加入しているわけではないので注意が必要です。

なお、借金の相続を回避するためには、相続放棄の手続きをとる必要があります(下で別に解説します)。

家族の借金問題を解決する方法

家族の借金問題を解決する方法としては、次の3つがあげられます。

相続放棄をする
家族が肩代わりする
借金した本人に債務整理で解決させる

借金の相続は「相続放棄」で回避できる

家族が借金を残して亡くなったときには、相続放棄で対応することができます。

ただし、相続放棄する際には、次の点に注意が必要です。

相続放棄は相続開始から3ヶ月以内に手続きをとらなければならない
「借金だけを放棄する」ことはできない

相続放棄をするためには、相続開始から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きをしなければなりません。

家族が亡くなると、葬儀や法要などで3ヶ月はあっという間に過ぎてしまいます。

実際には、相続開始から3ヶ月を経過してから被相続人の借金が発覚することも珍しくありません。

また、相続放棄するときには、すべての相続を放棄することになります。

不動産などは相続して借金だけを放棄するということはできません。

「プラスの財産の分だけ借金も相続する」という「限定承認」の方法もありますが、手続きが煩雑なため実際にはあまり利用されていません。

借金の返済を肩代わりする

「手持ち資金に余裕がある」のであれば、家族の借金を肩代わりしてあげるのも解決策の1つといえます。

しかし、ドラマや映画などで見るように「子どもの借金を親の退職金で返済する」というようなことはあまりお勧めできません。

家族の借金が心配だとしても自分の生活を犠牲にすることは控えるべきでしょう。

なぜなら、下で解説するように、家族の借金は「肩代わりしてあげて終わり」にならないこともあるからです。

家族の借金を肩代わりするときには、「肩代わりした借金を返す約束をさせる」、「貸付自粛制度の申請をさせる」といった措置もとるべき場合もあるでしょう。

貸付自粛制度については、下記の日本貸金業協会のウェブサイトでご確認ください。

貸付自粛制度の手続き方法(日本貸金業協会ウェブサイト)

借金した本人に債務整理で解決させる

借金問題は、借金した本人の手で解決できるのが最善でしょう。

収入不足や借金が増えすぎたことで約定返済が難しくても、債務整理すれば借金問題の多くは解決できます。

債務整理には、「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」の方法があり、状況に応じて手続きを選択します。

債務整理は、早期に着手すれば、財産の処分も必要ありません

しかし、債務者本人は、「まだ自力で返せる」と思い込んでいることも少なくありません。

また、債務整理についての誤解や思い込みから、「債務整理はできない」、「債務整理したくない」と考えている場合もあります。

また、借金の返済に行き詰まった精神的な負担から、冷静に判断できなくなっていることも少なくありません。

その場合には、債務者本人が債務整理(借金問題)と冷静に向き合うきっかけを作っていく必要があります。

債務整理の依頼を家族がすることはできないからです。

借金をしてしまった家族にしっかり寄り添うことが大切

借金問題を解決するときには、家族の存在・役割は非常に重要です。

家族の支援によって借金と向き合えるようになり、返済期間中の心の支えにもなることが多いからです。

それとは逆に、家族が間違えた対応をしてしまえば、「借金の隠蔽」や「自転車操業」のきっかけとなり事態がより深刻化することもあります。

「叱る」、「問い詰める」は逆効果になる

多額の借金を抱えた家族を「叱る」ことや「問い詰める」ことは控えるべきです。

たしかに、浪費やギャンブルなどを原因に借金を作ったときには、家族として怒りを覚えることや、「注意しなくては」と感じることがあるかもしれません。

しかし、借金を抱えて一番悩み苦しんでいるのは、債務者本人です。

ほとんどの債務者は「借金をしてしまったこと」や「借金が返せなくなった現状」に引け目や負い目を感じています。

「マズイことをしてしまった」と全く感じていない債務者は、確信犯で詐欺的に借金をしたようなケースを除けば、ほとんどいないでしょう。

また、借金で悩んでいる人のほとんどは、将来に大きな不安を感じています。

一番の味方であるはずの家族が、債務者本人を叱ったり、糾弾したりすることは、債務者の心情をさらに追い詰めることになります。

追い詰められた結果、「マズイことをしてしまった」という気持ちよりも「家族に叱られたくない」気持ちや、「自分だけで何とかしなければ」という感情が強くなってしまえば逆効果です。

債務者が1人で問題を抱え込んでしまうことで、状況把握が遅くなり、さらに借金が増えてしまうリスクが増えるだけです。

なお、多重債務者向けのカウンセリング実務でも、「債務者を叱る」、「借金の原因を責める」ことはタブーとされています。

債務者自身が借金問題と向き合える環境を整えるためには、家族は「安心して頼れる(相談できる)存在」でなければなりません。

家族の借金問題を解決するためには、「借金を抱えた家族を1人にしない」ことが最も大切です。

借金の原因を探る

借金には必ず理由があります。

家族の借金問題をきちんと解決するためには、借金の原因を正しく把握することが重要です。

リストラや病気などによる収入源が原因であれば、再就職・復職などによって問題が解決される場合も多いでしょう。

これに対して、借金の原因が、ギャンブル依存や不安障害などの精神的な症状による場合には、一度解決したはずの借金問題が再発する可能性もあります。

買い物依存、借金依存とよばれる症状の背景には不安障害があることが少なくありません。

また、借金が原因で鬱になったしまったときも同様です。

不安障害や依存症などは、簡単に克服できるものではありません。

専門医やカウンセラーによるカウンセリングなどが必要なこともあるでしょう。

しかし、債務者本人がこれらの症状を自覚していない場合が少なくありません。

家族が焦って対応を間違えれば「病気扱いされた」反発され、問題を1人で抱え込んでしまう原因になってしまいます。

一般の方が考えている以上に、「借金に関する心の病」は根が深い場合が少なくありません。

対応が難しいときには、まずは家族の方が専門医などに相談してから対応することも大事でしょう。

債務整理の目安

現在の借金の仕組みは、「家族に知られにくい」ように設計されています。

たとえば、借金の利用明細をウェブで受け取れば、紙として残ることがありません。

また、延滞があっても督促の電話は、通常は債務者本人の携帯電話宛てになされます。

債務整理のタイミングについては下記の記事で詳しく解説をしています。

参考⇒債務整理をするべきタイミングって?判断基準を解説

督促の電話や郵便物が届いたときには、借金はかなり深刻

家族の借金に気づく典型例は、自宅に債権者から督促の郵便物や電話がかかってきた場合です。

しかし、自宅に郵便物や電話がくるケースでは、すでに「延滞が長期化」していることがほとんどです。

消費者金融や銀行は、債務者本人と携帯電話で連絡がとれているうちは、自宅に電話してくることはありません。

また、2ヶ月以上の延滞がなければ郵便で督促することもありません(口座振替で返済しているときには、延滞がない場合でも「利用明細」が郵便で送付されることがあります)。

したがって、自宅に督促の電話や郵便物がくるということは、「債務者が携帯電話への連絡を無視している」、「長期の延滞がある」ことが強く疑われます。

このようなときには、督促された借金以外にも借入があり「多重債務」となっている可能性も少なくありません。

したがって、「督促郵便や電話に気がついた」というときには、できるだけ早期に債務整理に着手すべき場合が多いと思われます。

早期対応のためには「日頃のコミュニケーション」が大切

借金問題は早期対応が非常に重要です。返済に行き詰まってすぐに対処すれば、自己破産を迫られることもほとんどないでしょう。

他方で、家族の借金は、早期に発見することは難しいことが少なくありません。

借金問題を早期にみつけるためには、家族間の日頃の関係が非常に重要です。

ところが、日本では「家族間でお金の話をしない」傾向が強くあります。

共働きの夫婦などでは、互いの給与額を把握してない場合も最近では珍しくありません。

家族の借金が発覚したときには、「なぜもっと早く相談してくれなかったのだ」と感じることがあります。

しかし、普段ですらお金の話をすることは「ハードルが高い」のですから、「お金で悩んでいる」ことを相談するのは簡単ではないのです。

日頃から家族間で十分なコミュニケーションをとって、些細な変化に気づける環境、相談できる環境を整えておくことが大切です。

家族の借金問題のまとめ

家族の借金問題は非常にデリケートな問題です。

ほとんどの人が借金で悩んでいることは「家族にも知られたくない」と思っています。

心配のあまりに、家族が過度の対応をすれば、逆効果になることすらあります。

しかし、借金で悩んでいる人にとって、家族の支えは最も心強いものでもあります。

また、債務整理について誤解を持ってる人、「弁護士や司法書士は怖い、敷居が高い」と感じている人は少なくありません。

家族の方が正しい知識を持つことは、債務者本人が債務整理と向き合える環境と整えることにも必ず役に立ちます。

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