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外交官の債務整理を成功させる6つのポイント

外交官というと、華やかな生活を送っていて、借金とは無縁というイメージがあるかもしれません。

しかし、外交官といっても、キャリア・ノンキャリアの違いなどがあるように、必ずしもすべての人が裕福な生活を送っているわけではありません。

たとえば、若手ノンキャリア外交官であれば、上場企業や政令市職員よりも手取り月収は少ないことの方が多いでしょう。

また、給料が高い人であっても、相続や他人の連帯保証人になったことで、多額の借金を抱え込んでしまうこともあるかもしれませんし、株などの取引で大損してしまうことも考えられます。

外交官は、外国での仕事も多く、外国でした借金や、外国に財産(預貯金・不動産)がある場合も少なくないでしょう。

そこで、今回は、外交官が自己破産などの債務整理をする際に知っておいてもらいたい11の重要ポイントについて解説します。

外交員が自己破産をすると職務遂行や今後の出世に悪い影響がでる可能性も少なくありません。自己破産せずに借金問題を解決するには、早期の対応がとても大切です。

借金の返済が苦しいと感じたときにはできるだけ早く、弁護士・司法書士に相談しましょう。

また、『利息の支払いだけで毎月かつかつで、自転車操業のような状態が続いている。』

『借金の元金が1年以上の長期に渡って減っていないor増えている。』

このような状態まで状況が悪化している方は、既に黄色信号が点滅している状態です。

手遅れになる前に今すぐに法律事務所に相談をしてください。

それでは解説をしていきます。

外交官は債務整理するとクビになる?

外交官に限らず、債務整理したことで職を失うことを心配する人は少なくありません。

しかし、外交官は債務整理をしたことだけが原因で懲戒免職となることはありません。国家公務員である外交官は、手厚い身分保障があるからです。

国家公務員の懲戒事由は、国家公務員法82条で次のような場合に限られています。

国家公務員法等に違反した場合
職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合

「借金」や「債務整理」は、国家公務員法違反に該当しないことは明らかです。また、これらが「職務上の義務の違反」、「職務懈怠」、「公務員にふさわしくない非行」に該当するとも、一般的にはいえません。

また、借金や債務整理は、国家公務員としての「欠格事由」にも該当しません。国家公務員の欠格事由、国家公務員法38条が定める下記の事情に限られています。

・成年被後見人または被保佐人
・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
・懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
・人事院の人事官または事務総長の職にあって、国家公務員法109条から111条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
・日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、またはこれに加入した者

借金・債務整理が原因で懲戒される可能性があるケース

借金が原因で「勤務に支障を来した」場合には、減給・降格・退職などの処分の対象となりえます。

たとえば、「借金返済の金策のために無断欠勤や年休の不正使用がバレた」場合や、「取立ての電話がひどすぎて部署の業務執行に大きな迷惑をかけた」というケースでは、処分の対象となる可能性があります。

また、外交官は、国益のためにさまざまな人と関係を作ります。

多額の借金があるということは、不当な取引に巻き込まれるリスクや不正行為の原因にもなりかねません。そのため、借金があることを勤務先に知られれば、出世などに事実上の悪影響が生じる可能性もあるかもしれません。

関連記事⇒債務整理と職業制限?自己破産をするとクビや仕事への影響がある?

外交官が自己破産した場合の重要ポイント

自己破産は、債務者(破産者)のすべての負債と財産を同時に清算する手続きです。そのため、破産免責によって多額の負債の免除を受けられる反面、一定のデメリットなどが生じてしまいます

自己破産(債務整理)してもパスポートを失うことはない

外交官の仕事は当然海外に出向くことが前提となります。

自己破産をしてもパスポート(旅券)は失うことはありません。

また、ビザの発給についても、外交官ビザであれば、過去の債務整理が問題となる場面は、あまりないと思われます。

他方、就労ビザや留学ビザなどの場合には、資産要件などの関係で過去の借金問題が発給に影響することもあるかもしれません。

海外でした借金はどうなるか?

自己破産はすべての借金を対象に行われる手続きです。

したがって、国内だけでなく海外でした借金も申告しなければなりません。

ただし、海外での借金に対しては、日本での自己破産の効果がすぐに及ぶとは限らない点に注意が必要です。

海外での借金について日本での自己破産の効果を及ぼさせるためには、その国の裁判所に日本での自己破産を「承認」してもらう必要があるからです。

たとえば、フランスでした借金がある場合であれば、フランスの裁判所が日本での自己破産を承認する前に、フランスの債権者が、フランスにある債務者の財産を差し押さえてしまう可能性は残されるということです。

他方で、日本で自己破産をしてしまえば、外国の借金の取り立てのために、日本国内の財産が債権者に差し押さえられることはありません。

外国で、借金を支払う義務のある判決が言い渡されていた場合でも、日本で自己破産してしまえば、その強制執行を日本の裁判所が承認しないからです。

いずれにせよ、外国に負債や財産があるときには、弁護士とよく相談した上で慎重に対応する必要があります。

自己破産の対象となる財産の範囲

自己破産では、一般的な生活家具・家電を除いた20万円以上の価値のある財産は、すべて処分の対象となります。

海外にある財産も自己破産の対象となるので、漏れずに申告しなければいけません。

ただし、海外にある資産については、差し押さえに費用が高くなりすぎれば処分が見送られることもあります(きちんと全部を申告することが大切です)。

自己破産した場合の退職金の取扱い

自己破産したときには、「自己破産したときに退職すれば得られるであろう退職金見込み額」が差し押さえの対象となることがあります。

法律の上では、退職金は「給料の後払い」となるので、自己破産の時点ですでに現在化されている(期限のきている)債権とされているからです。

退職金見込み額が破産管財人による差し押さえの対象となるのは、自己破産の時点での支給見込み額が160万円以上の場合です。この場合に差し押さえられるのは、見込み額の1/8の20万円となります。

破産管財人によって退職金が差し押さえられるときには、必ず支払者である国に通知が行くため、自己破産したことが勤務先にバレてしまいます。

ただし、退職金見込み額に相当する金銭を、自由財産(差し押さえられなかった財産)・新得財産(自己破産後の収入)から積み立てることができれば、破産管財人による差し押さえを回避できる場合があります。

管財事件となった場合のデメリット

外交官が自己破産した場合には、「管財事件」となる場合が多いといえるでしょう。外交官が自己破産する場合には、「20万円以上の財産が全くない」というケースはあまり考えられないからです。

申し立てた自己破産事件が管財事件となったときには、破産管財人による財産の調査などを確実に行うためには、次のような制限や負担が生じてしまいます。

引っ越しや長期の旅行(出張)には裁判所の許可が必要となる
破産者宛ての郵便物はすべて破産管財人に回送される
免責審尋(債権者集会)に出席しなければならない

引っ越しなどの制限や、郵便物の回送は、破産手続き開始決定のときから破産手続きの終了まで続きます(半年~1年程度)。

また、免責審尋は、いわゆる少額管財事件の場合には、第1回債権者集会の日程にあわせて開催されます。通常は、平日の日中に行われるので、仕事を休む必要があるでしょう。

自己破産については下記ページで詳しく解説をしています。

参考⇒自己破産はメリットしかない?家族や子供、仕事にデメリットはないの?

ギャンブル・浪費が原因の借金で自己破産する場合

外交官が自己破産する場合には、生活苦が原因というケースはあまりないでしょう。国家公務員である外交官は、給料が安定していて、福利厚生もしっかりしているので、生活のために借金をする必要がほとんどないと考えられるからです。

浪費や風俗、株などの投機行為が原因で多額の借金を作ったことで自己破産した場合には、免責不許可事由に該当します。

免責不許可事由に該当する場合でも、裁量免責を得られる可能性が高いのであきらめる必要はありません。実際にも、誠実に破産手続きに対応したケースのほとんどは、裁量免責が与えられています。

しかし、裁量免責を与える場合には、差し押さえ可能な財産の有無に関わらず、必ず(少額)管財事件となります。

そのため、予納金(20万円以上)の負担が必要なほか、上記で紹介した管財事件となることのデメリット・負担が発生します。

関連記事⇒ギャンブルの借金は債務整理できる?賭け事での負けを自己破産する方法

住宅ローンの残ったマイホームを失わずに借金を解決できる個人再生

カードローンなどの借金のために住宅ローンの返済が苦しくなったときには、「住宅ローン特則付き個人再生」を利用すれば、住宅ローンの返済を維持できるように、その他の借金の負担を減らしてもらうことができます。

個人再生で免除してもらえる借金の額

個人再生の最大のメリットは、財産の処分を伴わずに、借金(元金)の一部を免除してもらえることです。

個人再生における借金の免除額は、手続きの対象となる借金の総額によって異なります。

たとえば、「400万円の借金は100万円」まで減額、「1,000万円の借金は200万円」まで減額してもらえる可能性があります。

ただし、保有財産の総額(清算価値)が上記の金額を超えるときには、清算価値の金額以上を返済しなければならないことに注意が必要です。

自己破産した場合の配当額よりも返済額が少なくなることは、債権者の利益を害することになり認められないからです(清算価値保障の原則)。

清算価値は、自己破産した場合に差し押さえ可能な財産の評価額で計算されます。

たとえば、次のような場合には、保有資産の評価額が高いために、個人再生をしても借金の免除額が少ない(全くない)場合もあります。

・住宅ローンを完済した(残額の少ない)不動産があるとき
・高額な預貯金をもっているとき
・高額な解約返戻金のある生命保険があるとき
・勤続年数が長いとき(退職金見込み額が多いとき)

住宅ローンの返済負担も減らしてもらうことが可能

いわゆる住宅ローン特則付き個人再生を申し立てたときには、無担保の借金(カードローンなど)の一部免除だけでなく、住宅ローンについても次のような返済条件の変更を認めてもらえます。

最大10年までの返済期間延長(ただし債務者の年齢が70歳になるまで)
一定期間の元金据え置き(利息のみの支払い)
ボーナス払いの条件変更(債権者が同意した場合)

借金減額と住宅ローンの返済条件見直しを組み合わせれば、毎月の支払い額をかなり軽くすることも可能でしょう。

ただし、住宅ローンについては、返済条件を見直せるだけで、ローンの返済総額を免除してもらうことはできません。

勤務先に知られずに債務整理することはできる?

「借金が返せなくなったこと」、「債務整理で借金を解決すること」を勤務先に知られたくないのは、外交官に限らず、誰でも同じだと思います。

しかし、外交官が借金問題を解決するときには、自己破産・個人再生をすると、勤務先に内緒にしておくのは難しい場合が少なくないと思われます。

公務員は共済組合から借入があることが多い

借金のある公務員の人は、国家公務員共済組合(KKR)から借金がある場合が少なくありません。共済組合からの借金は、金利の面で銀行や消費者金融よりも有利だからです。

個人再生・自己破産は、すべての負債を対象に手続きを行わなければなりません。

したがって、勤務先と密接な関係のある共済組合から借金があるときに個人再生・自己破産をすれば、共済組合経由で自己破産・債務整理したことを知られてしまう可能性があることを否定できないのです。

もっとも、共済組合の担当者には守秘義務があるので、「〇〇さんが自己破産(個人再生)した」ということをわざわざ伝えることはないと思います。

とはいえ、共済組合からの借金があるときには「給料天引き」で返済するのが一般的なのです。

自己破産・個人再生する場合には、この給料天引きを停止しなければなりませんから、職場に「何かあった」と勘ぐられる可能性があることも否定できません。

任意整理なら「共済組合」を除いて債務整理できる

任意整理は、裁判所を利用せずに、個々の債権者と直接交渉することで、借金の返済負担を軽くしてもらう手続きです。

任意整理であれば、交渉の対象とする債権者を自由に選べるので、「共済組合は除外して(そのまま返済して)、他の借金だけを整理する」ということも可能です。

ただし、任意整理は裁判所を利用しない手続きなので、将来利息の免除と、返済回数の見直しでしか借金の返済負担を減らすことができません。

アコムなどの消費者金融や銀行カードローンの借入が多いときには、利息免除だけでも大幅に負担を減らすことは可能です。

国家公務員である外交官であれば、身分の保障もしっかりしているので、長期間の分割返済でも債権者に同意してもらえる可能性も高いでしょう。

それでも、借金の金額が大きすぎれば、任意整理では借金を解決できない場合も少なくありません。

任意整理という解決の選択肢を残すためにも、借金返済に行き詰まったときには、無理な金策などをせずに、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談した方がよいでしょう。

まとめ

外交官の借金は、油断をするとものすごい金額になることがあります。

身分保障のしっかりしている国家公務員は、金融機関からの評価が高く、限度額も高く設定されることが多いからです。

特に、家族や勤務先に知られたくないと、自転車操業を繰り返せば、借金が2倍、3倍となってしまうことも珍しくありません。

自己破産をしてもクビになることはありませんが、出世などに悪影響がでる可能性はやはり低くないでしょう。

多額の借金を抱えてしまえば、国家の重要機密を任せられる人材とはいえないと判断されてもおかしいとはいえないからです。

勤務先に知られずに借金問題を解決するには、任意整理が一番です。

任意整理で解決するためにも、借金の返済が苦しいと感じたときには、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談しましょう。

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