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薬剤師の債務整理を成功させる7つのポイント

国家資格を用いて仕事をしている人にとっては、資格や免許の取消しは死活問題です。

薬剤師として働いている人が多額の借金を抱えてしまったときにも、「自己破産したら薬剤師の免許を失うのではないか」と不安に感じている人もいるかもしれません。

たしかに、債務整理する状況では、さまざまなことに不安を感じて、弁護士・司法書士に相談することをためらってしまう人も少なくないようです。

そこで、今回は、薬剤師が、多額の借金を抱えて債務整理するときに知っておきたい5つのポイントについて解説していきます。

薬剤師の仕事は、一般的に求人も多く、働き口に困ることはあまりないと言われています。

借金が返せなくなったときであっても、債務整理で返済の負担を軽くすることができれば、家計は必ず立て直せます。

また、借金が膨らみきる前に対処できれば、誰にも知られずに借金を解決できる場合も少なくありません。

借金返済が苦しいと感じている薬剤師さんは、参考にしてみてください。

また、『利息の支払いだけで毎月かつかつで、自転車操業のような状態が続いている。』

『借金の元金が1年以上の長期に渡って減っていないor増えている。』

このような状態まで状況が悪化している方は、既に黄色信号が点滅している状態です。

手遅れになる前に今すぐに法律事務所に相談をしてください。

それでは解説をしていきます。

債務整理しても薬剤師をやめる必要はない

国家資格で仕事をしている人には、「債務整理したら資格・免許を取り上げられるかもしれない」という心配をしている人も多いかもしれません。

たしかに、弁護士・弁理士といったいわゆる「士業」の多くは、自己破産すると資格が取り消されます(復権すれば再登録可能)。

しかし、薬剤師の免許は、債務整理をしても取り消されたり、業務停止を命じられたりすることはありません。

法律の規定を確認

薬剤師法における欠格事由・免許取消(業務停止)に関する定めを抜粋すると以下のとおりになります。

(絶対的欠格事由)
第四条 未成年者、成年被後見人又は被保佐人には、免許を与えない。

(相対的欠格事由)
第五条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者

(免許の取消し等)
第八条 薬剤師が、成年被後見人又は被保佐人になったときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消す。
2 薬剤師が、第五条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の業務の停止
三 免許の取消し
薬剤師法|厚生労働省

上の規定を確認すればわかるように、上記の文言には、借金・負債・債務整理・自己破産・個人再生といったものは一切でてきません。

また、8条2項に規定されている「薬剤師としての品位を損するような行為」にも、多額の借金を抱えたことや債務整理したことは含まれないというのが通常の解釈です。

「品位を損するような行為」というのは、たとえば、「薬剤師という薬剤を自由に調剤できる地位を利用して、不正に薬剤を入手・使用した」場合や、「自ら調剤した薬剤を使用して卑猥な行為をした」場合などを念頭においているからです。

薬局を営業していて債務整理をするとどうなる?

薬剤師の人のなかには、自ら薬局を営業している人もいると思います。自営で薬局を営んでいる人が債務整理をしても薬局の営業それ自体には影響がないと考えてよいでしょう。

債務整理をすると薬局開設許可はどうなるか?

薬局の営業許可については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)という法律に定めがあります。

薬局の営業許可が取り消されるのは、この法律や薬事法などに違反した場合のほか、薬局の設置申請者が、医薬品医療機器等法5条が定める場合に該当したときです(医薬品医療機器等法75条)。

(許可の基準)
第五条 次の各号のいずれかに該当するときは、前条第一項の許可を与えないことができる。
一 その薬局の構造設備が、厚生労働省令で定める基準に適合しないとき。
二 その薬局において調剤及び調剤された薬剤の販売又は授与の業務を行う体制並びにその薬局において医薬品の販売業を併せ行う場合にあっては医薬品の販売又は授与の業務を行う体制が厚生労働省令で定める基準に適合しないとき。
三 申請者が、次のイからヘまでのいずれかに該当するとき。
イ 第七十五条第一項の規定により許可を取り消され、取消しの日から三年を経過していない者
ロ 第七十五条の二第一項の規定により登録を取り消され、取消しの日から三年を経過していない者
ハ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、三年を経過していない者
ニ イからハまでに該当する者を除くほか、この法律、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)その他薬事に関する法令で政令で定めるもの又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があつた日から二年を経過していない者
ホ 成年被後見人又は麻薬、大麻、あへん若しくは覚醒剤の中毒者
ヘ 心身の障害により薬局開設者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

上の規定を確認しても、「債務整理した場合」、「多額の借金を負った場合」に該当する文言はでてきません。

法人の代表者になっている場合には注意が必要

自営で薬局を営んでいるケースでは、自らが法人の役員に就任している場合も多いでしょう。

法人の役員に就任している人が自己破産した場合には、役員を退任しなければならないケースが多いことに注意が必要です。

株式会社の取締役は、自己破産をすると取締役を必ず退任することになります。取締役の胃子破産によって、株式会社との委任契約が自動的に終了するからです。

また、合同会社などの持分会社の場合にも、一般的な定款では、役員自己破産が退任事由となっています。

ただし、いずれの場合でも、正規の再任手続き(株主総会)などを減ることで、すぐに役員に再任されることは可能です。また、持分会社の場合には自己破産しても退任しない旨の定款を定めることも可能です。

とはいえ、役員を退任することに伴い、薬局の許認可についても届け出が必要となる場合もあります。

また、1人社員(役員)の法人であれば、役員の退任に伴い法人が解散となってしまうこともあるので注意しましょう。

関連記事⇒会社役員と債務整理?法人役員が自己破産や任意整理をする方法と注意点

債務整理が原因で勤務先の薬局をクビになることはあるのか?

薬局などに勤務している薬剤師の場合には、債務整理をしても職を失うことはないのが原則です。

法律では、「多額の借金」や「債務整理したこと」のみを理由に解雇することは、解雇権の濫用として認められないと考えられているからです。

たとえば、労働契約法16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。

借金や債務整理がきっかけで薬局や病院を解雇される可能性があるのはどんなときか

債務整理や借金だけを原因に解雇されることはありませんが、借金などがきっかけとなり「勤務先の業務に大きな迷惑をかけてしまった」場合には、解雇や減給・降格などの処分を受ける可能性が生じます。

たとえば、他の資格の場合には、宅地建物取引士や旅行業務取扱管理者などの場合には、自己破産による登録の取消によって、店舗の許認可に大きな影響を与える場合があります。

薬剤師の場合には、債務整理をしても免許には一切の影響がないため薬局の開設許可に影響を与えることもありません。

その意味では、薬剤師が債務整理をしても、勤務先の薬局の業務に大きな迷惑をかけることは、基本的にはないといえます。

しかし、債務整理をせずに、無理な金策や督促の無視で借金問題の解決を後回しにした場合には、勤務先に迷惑をかけてしまう可能性もあります。

たとえば、

借金のことが気になって業務に集中できず重大ミスが増えた
金策などのために、遅刻や欠勤が相次いだ、無断欠勤や有給の不正利用をした
借金の取立ての電話が相次いで薬局業務に多大な迷惑をかけた
ヤミ金業者が取り立てにやってきて、顧客に迷惑をかけてしまった

といったことが生じたときには、「業務懈怠」、「無断欠勤」などが、解雇・減給・降格の理由となることも考えられます。

「債務整理をするとクビになる」という心配をする人は多いようですが、実際には、債務整理しなかった場合の方が職場に迷惑をかける可能性が高くなるといえます。

勤務先の薬局や病院に知られずに債務整理できるか?

解雇などの可能性が少ないとしても、やはり債務整理することは勤務先には知られたくないものです。

薬剤師の人のなかには、地元に密着して働いている人も多いと思いますので、周囲の目も気になるという人も多いと思われます。

しかし、実際の債務整理のほとんどは、他人に知られずに行える場合がほとんどなので、安心してよいでしょう。

任意整理で解決できれば他人に知られる可能性はほとんどゼロ

借金を「任意整理」で解決できれば、ほとんどすべてのケースで誰にも知られずに済ますことができます。

裁判所を用いない任意整理であれば、公告の手続きがないからです。

任意整理で解決できるケースでは、家族にも知られずに借金を解決できることも珍しくはありません。

しかし、任意整理は、裁判所を用いない分、借金減額の効果にも限界があります。

したがって、任意整理で借金を解決したいときには、できるだけ早く、借金が膨らみきる前に債務整理に着手することが何よりも大切といえます。

任意整理については下記ページで詳しく解説をしています。

参考⇒任意整理のメリットとデメリット?債務整理で1番多い手続きの注意点

自己破産・個人再生をしても誰かに知られるリスクは小さい

自己破産、個人再生をした場合には、すべての債権者に手続きを知らせる必要があるため、官報と裁判所の掲示板で、「公告」がなされます。

公告される内容は、手続きの内容(開始決定・免責決定・再生計画認可決定があったこと)と債務者の氏名・住所などです。

しかし、「公告される」といっても、実際に官報や裁判所の掲示板を確認している人は皆無といえます。

そもそも、「官報」という冊子があることや裁判所の掲示板に自己破産の情報が掲示されることを知っている人はあまりいないでしょう。

また、官報や裁判所の掲示板には、他の公告も多数掲載されているので、その中から特定の人の情報を偶然見つけるということは、まずあり得ません。

個人再生については下記ページで詳しく解説をしています。

参考⇒個人再生は家を残せる大きなメリットがあるが2つのデメリットもある

自己破産については下記ページで詳しく解説をしています。

参考⇒自己破産はメリットしかない?家族や子供、仕事にデメリットはないの?

契約社員やパートタイムで働く薬剤師でも債務整理できるのか

薬剤師の人の中には、転勤を回避したり、時間に融通を利かせて働きたいために、契約社員などの正規雇用以外で働く人も多いと思います。

非正規雇用という不安定な身分で働くことが債務整理に悪影響を与えるかもしれないと不安に感じる人もいるかもしれませんが、そのような心配は基本的に不要です。

関連記事⇒契約社員と債務整理?契約社員が自己破産や任意整理をする方法と注意点

自己破産は収入がなくても利用できる手続き

自己破産では、破産手続開始決定の時点での負債と財産とを清算する以外の方法では、借金の返済を行いません。

免責を得られれば、配当できなかった残債務の返済義務も免除されるので、収入の全くない人であっても申し立てることができます。

したがって、正規雇用か非正規雇用(アルバイト・パート)かということを気にする必要は一切ありません。

任意整理は、勤務形態よりも手取り月収が大事

任意整理で借金を解決するときには、借金の残元金を3年から5年程度の期間で分割返済する必要があります。

将来利息は免除されるので、返済負担は軽くなりますが、実際に借りた金額(元金)をカットしてもらうことは難しい場合がほとんどです。

したがって、任意整理で借金を解決するためには、毎月一定の金額を返済できるだけの収入がなければいけません。

たとえば、120万円の借金を5年で分割返済する和解を成立させるためには、最低でも毎月2万円ずつは確実に支払えるだけの返済能力(手取り月収-生活費)が必要です。

言い換えれば、任意整理に必要な返済能力さえあれば、正規雇用か非正規雇用かということは全く問題になりません。

個人再生でも問題ない場合がほとんど

個人再生の場合も、基本的な考え方は任意整理の場合と同様です。

個人再生では、借金の残元金についても一部免除を受け、原則3年間の分割で返済しなければならないからです。

たとえば、300万円の借金を個人再生したときには、100万円を3年で分割返済することで、200万円の返済を免除してもらえる可能性があります。

この100万円の3年での分割返済が「確実にできる」と思われるだけの収入があれば、非正規雇用やアルバイトであっても個人再生を利用することができます。

返済期間中に契約が切れるケースであっても、それまでの勤務状況から契約が更新される可能性が高ければ、個人再生を利用することは可能です。

個人再生については下記ページで詳しく解説をしています。

参考⇒個人再生は家を残せる大きなメリットがあるが2つのデメリットもある

まとめ

借金が返せなくなった状況では、誰もが色んなことに不安を感じます。

また、借金が返せなくなったことや、債務整理しなければならなくなったことは、誰にも知られたくないというのも、ごく自然な感情です。

しかし、実際の債務整理では、このような心配をする必要はありません。

薬剤師の免許は債務整理をしても一切影響がありません。また、債務整理をしても誰かに知られてしまう可能性もかなり低いといえます。

むしろ、「こんなデメリットがあったら困る」と考えていることは、借金問題の解決を後回しにした場合の方が起こりやすいものです。

借金問題は、早期に対応することで、コストもデメリットも最小限に抑えることができます。

借金の返済が苦しいと感じたときには、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談してみましょう。

債務整理ならアヴァンス法務事務所

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