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自己破産と住宅ローン
多くの人にとって「自分の家」を持つことは、大きな目標でしょう。
しかし、とても高額な買い物となるマイホームを現金一括払いで購入できる人はほとんどいません。
マイホーム購入には住宅ローンを組むことが必須といえます。
しかし、過去に自己破産していると、「住宅ローンを組むことはできないのではないか」と不安になります。
たしかに、自己破産をすれば信用情報に傷がつくため、住宅ローンを組むことが簡単ではなくなります。
しかし、自己破産した人は、「一生マイホームを買えない」というわけではありません。
今回は、自己破産後に住宅ローンを組む3つの方法とその注意点について解説します。
「将来家を買いたいから自己破産だけはできない」と考えている人や、「過去に自己破産したからもうマイホームは買えない」と諦めてしまっている人は参考にしてください。
また、『借金を完済するのは厳しい事が心の中では分かっているが放置し続けてしまっている。』
『給料が出ても結局返済で終わってしまい、またお金を借りてしまう。』
このような状況まで状態が悪化している方は、既に黄色信号が点滅している状態です。
手遅れになる前に、今すぐに法律事務所に相談を行ってください。
ケースによっては自己破産以外の方法で借金問題を解決できる可能性もゼロではありません。
それでは解説をしていきます。
自己破産すると住宅ローンを組めなくなる?
自己破産をはじめとした債務整理は、「信用事故」として扱われます。
そのため、自己破産すると、「信用事故があった」ことが信用情報機関のデータベースに登録されます。
「自己破産するとブラックになる」というのは、事故情報が信用情報に登録されることです。
信用情報機関には、3つの機関があり、自己破産した場合の事故情報の保存期間は次のとおりです。
信用情報機関の名称 | 主な加盟機関 | 情報登録期間 |
---|---|---|
日本信用情報機構(JICC) | 消費者金融 | 5年 |
シーアイシー(CIC) | クレジットカード会社 | 5年 |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行 | 10年 |
この期間の間は、住宅ローンを組めないのはもちろん、カードローンやクレジットカードの発行を含めたすべての「与信行為」が難しくなります。
特に、銀行カードローンを自己破産で解決したときには、最大で10年間、銀行でローンを組むことができなくなります。
過去に債務整理した金融機関では「喪明け」後もローンを組めない
金融機関は、信用情報機関に登録される信用情報とは別に、独自の顧客情報を作成・保存していることが一般的です。
信用情報機関の信用情報とは異なり、社内の独自情報は保存期間などが定められているわけではありません。
永久保存という金融機関も少なくないでしょう。
したがって、自己破産の債権者であった銀行からは事故情報が消去された後であっても、住宅ローンを組めない可能性が高いといえます。
また、大手消費者金融の多くは銀行と密接な関係があります。
たとえば、アコムは三菱東京銀行の傘下、プロミスは三井住友銀行の傘下です。
提携関係にある消費者金融と銀行では顧客情報を共有していることも少なくありません。
銀行ローンの融資条件には、「保証会社の審査に通過すること」が含まれている場合がほとんどです。
銀行ローンの保証会社は資本傘下にある消費者金融がつとめています。
したがって、自己破産の債権者に大手消費者金融が含まれていたときには提携先の銀行で住宅ローンが組めない場合があることにも注意が必要です。
自己破産後に住宅ローンを組む3つの方法
自己破産を経験した人が住宅ローンを組む方法としては、次の3つが考えられます。
事故情報がなくなってからローンを申込む
審査の緩い金融機関の住宅ローンを利用する
配偶者や家族の名義で住宅ローンを組む
ただし、いずれの方法も「これで必ず住宅ローンが組める」というものではないので注意が必要です。
事故情報が消去されるのを待つ
最もスタンダードな方法は、信用情報機関のデータベースに登録されている事故情報が消去されるのを待つことです。
事故情報は保存期間が経過すれば必ず消去されます。
信用情報の状況については、それぞれの信用情報機関に照会することで、確認することができます。
ただし、信用情報の照会には、本人確認資料と手数料が必要です。
・日本信用情報機構(JICC)の開示手続き(郵送・PC・スマホ)
・CICの開示手続き(郵送・PC・スマホ)
・KSCの開示手続き(郵送のみ)
なお、「成約残し」といって、手違いなどが原因で、破産免責の情報が信用情報に正しく反映されないことがあります。
成約残しがあれば、保存期間が過ぎても事故方法は消去されずに残ってしまいます。
この場合には、自己破産の債権者である金融機関に必要な対応を依頼しなければなりません。
JICCやCICといった信用情報機関に情報消去の依頼をしても対応してもらえないので注意が必要です。
なお、「事故情報取消し」の依頼をするときには、自己破産(破産免責)の際に裁判所から送達される「免責決定通知書」の写しを送付する必要があります。
紛失してしまったときには、裁判所の窓口で「免責確定証明書」の発行を受けると良いでしょう。
銀行以外の住宅ローンを利用する
借金を申し込んだときの審査が最も厳しいのは銀行です。
信用情報に事故情報が登録されている間は、銀行でローンを組むことはまず不可能といえるでしょう。
ところで、住宅ローンは、銀行以外の金融機関でも組むことができます。
たとえば、ノンバンク系金融機関や住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)であれば、「過去の自己破産歴があるだけで審査に落ちる」ということはないようです。
特に、住宅金融支援機構は、フラット35などの商品でよく知られ知名度もあり、金利も安いので安心できます。
ノンバンク系の住宅ローンは、銀行に比べると審査が緩い分、金利は高くなります。
ノンバンク系金融機関で住宅ローンを組むときには、しっかりとした返済計画を事前に立てることが大切でしょう。
配偶者や親の名義で住宅ローンを組む
自己破産によって信用情報に傷が付くのは、自己破産した本人だけです。
家族などの信用情報には一切の影響はありません。
したがって、配偶者や親の名義で住宅ローンを組むことは、信用情報の調査にも全くひっかかりません。
もっとも、配偶者や親に、「住宅ローンを組めるだけの収入」がなければいけませんし、親の「年齢が高すぎる」ときにはローンの申込みができない場合もあります。
また、住宅購入後のローンの返済や住宅の名義をめぐって後にトラブルが生じないように、事前にしっかり対応しておくことも大切でしょう。
万が一、住宅ローンの返済が滞れば、配偶者や親に迷惑をかけることになります。
自己破産後に住宅ローンを組むときの注意点
住宅ローンは非常に高額な借金をする契約です。
過去に重大な信用事故を起こしている人が住宅ローンを組むことは、そうでない人より当然難しくなります。
自己破産後に住宅ローンを組むときには、特に次の点に注意が必要です。
喪明け後すぐに申込みをしない
一度審査落ちしたら期間をあけること
審査に通りやすくするために「自己資金」を積み立てる
住宅ローンの申込みは「クレジットヒストリー」を作ってから
信用情報から事故情報が抹消されることを「喪明け」と呼ぶことがあります。
過去に自己破産歴がある人は、「喪明け後すぐ」に住宅ローンの申込みをしても審査に通過しない可能性が高いので注意が必要です。
ローンの審査では信用情報の調査が必ず行われます。
喪明け直後の場合には、当然直近の信用取引の記録が一切ありません(信用取引の記録がないことを「ホワイト」と呼ぶことがあります)。
現代の生活では、クレジットカードの利用などの信用取引が何かしらあることが一般的です。
信用情報が真っ白であれば、「過去に信用事故があったこと」が簡単に推測されるため、ローンの審査に通りづらいのです。
したがって、喪明けしたときは、いきなり住宅ローンを申し込むのではなく、クレジットカードなどの利用実績を積むことが必要です。
これを「クレジットヒストリー」を作るといいます。
「申込みブラック」に気をつける
過去に自己破産の経験がある人は喪明け後であっても、自己破産歴がない人よりも住宅ローンの審査に通りづらいと思われます。
そのため、住宅ローンを申し込んでも審査に落ちるということもあるでしょう。
信用情報機関のデータベースには、「審査否決」の情報も6ヶ月間保存されます。
これを「申込みブラック」とよびます。
過去の審査否決が消えないうちに新規の申込みをしても審査に通る可能性はかなり低いです。
審査に落ちたときには、申込みブラックが解除されるまでに、審査落ちの原因を克服するための準備期間とした方が良いでしょう。
自己資金(頭金)をしっかり用意する
住宅ローンは多額の借金を申し込むものです。特に過去に自己破産の経験がある人は、十分な準備をしてから申込みを行うべきです。
審査に通りやすい環境を整えるという意味では、「十分な頭金(自己資金)」を用意してから住宅ローンを申し込むことはとても大切です。
自己資金が多いほど、住宅ローンの審査は通りやすくなります。
自己破産後10年は、信用取引が一切できないのですから、「頭金を貯める準備期間」として上手に使いたいものです。
「自己破産後の住宅ローン」まとめ
自己破産をしたからといって、「一生マイホームが手に入らない」ということは決してありません。
「早く家を買いたい」と焦る気持ちもあるでしょうし、不動産屋から急かされることもあるかもしれません。
しかし、多額の借金を申し込む住宅ローンを組むことは決して簡単なことではありません。
審査落ちしないためにも、十分な準備を整えることが大切です。
また、これから自己破産しようと考えている人は、できるだけ早く自己破産を申し立てましょう。
破産免責が早いほど、喪明けの時期も早く訪れるからです。