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不動産投資の借金を債務整理で解決する方法
近年では、銀行に貯金をしてもほとんど利息がつきません。
そのため、「口座に眠らせておくくらいなら」と自分で投資を行う人も増えています。
将来の年金給付への不安も積極的に投資する理由のひとつになっている場合も多いようです。
「投資」といえば、株やFxなどの金融商品を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、不動産投資もとても人気です。
一昔前の不動産投資といえば、「安く買って高く売る」というキャピタルゲイン狙いの方法が主流でした。
最近では、マンション・アパート・駐車場の経営といったインカムゲイン(家賃収入)目的の不動産投資が増えています。
また、不動産投資は、付随して発生する諸費用を「経費」として計上することで、節税にもつながります。
税金を多く払うくらいなら「財産として残すことも出来る」不動産投資をしてみようと考えた人も多いと思います。
しかし、投資には必ずリスクがあります。
購入当初の想定通りに家賃を維持できなかったり、賃借人を確保できないケースは、実際には少なくありません。
不動産投資に失敗すると、多額の借金抱えてしまうことになります。
また、不動産を売却したくても担保に入っていて自由に売れないこともあるでしょう。
そこで、この記事では、「担保が設定されている物件をできるだけ高く売却する方法」と「多額の負債を解決する方法」について解説します。
また、『既に不動産投資に失敗しているのは分かりきっているのに、現実から逃げている。』
『毎月毎月、赤字が増えるだけで状況が良くなる見込みが無いことは頭の中では理解している。』
このような状態の方は、自力や家族の支えだけで現状を変えるのは不可能です。
手遅れになる前に、弁護士や司法書士に相談を行い、強制的に借金をすることが出来ない環境を作ってください。
それでは解説をしていきます。
不動産投資は失敗すると大変
不動産投資のリスクとしては、次のようなものを挙げることができるでしょう。
・不動産の滅失リスク(震災など)
・不動産価格・家賃の下落リスク
・空室リスク
・金利変動のリスク
これらのリスクを正確に予測することは不可能に近いといえます。
「近くに大きなショッピングモールがあるから」、「大学があるから」といった理由で、不動産を購入してみても、ショッピングモールの撤退、大学の移転などで、家賃下落や空室率があがることもあり得ます。
また、レオパレス21のオーナー達がレオパルスを相手取って集団訴訟を提起したことが話題になったように、「家賃保証」や「一括借り上げ」の契約をめぐるトラブルも増えています。
不動産投資は維持コストも大きい
不動産投資には、相応の維持コストがかかります。
毎年支払う「固定資産税」、「滅失リスクに備えるための各種保険」、「建物や設備の維持・管理にかかる費用」、「修繕のための積立金」、「敷金返還に備えるためのプール金」などかなりの費用が必要です。
ランニングコストを差し引いたら、「年数%程度の利回りしかない」というケースは、実は少なくありません。
さらに、不動産の購入・建設資金や維持コストを借金で工面すれば、金利変動によって収支も左右されてしまいます。
特に、変動利率で借り入れた場合には、金利上昇(に加え家賃の下落や空室の発生)によって突然赤字に転じてしまうということもあるでしょう。
不動産投資に失敗すると巨額の負債を抱えてしまう理由
不動産投資は、失敗すると1,000万円を超えるような巨額の負債を背負ってしまうことも珍しくありません。
アパート・マンション経営では、高いランニングコストがかかるので、赤字は毎月累積されていくからです。
手持ち資金で維持費用をまかなえなくなって、借金で工面するようになれば、負債額は雪だるま式に増えてしまいます。
その意味では、不動産投資は「引き際」が特に重要といえます。
不動産投資に限らず、投資をするときには「損ギリ」で終える覚悟をもっているべきでしょう。
しかし、実際の不動産投資のケースでは、撤退すべき時期に撤退しきれないことも珍しくありません。
失敗に気づいても損ギリに踏み切れない理由
赤字になっても撤退できない主な理由としては次のことが挙げられるでしょう。
・それまでに投じたお金が大きすぎる
・一発逆転を狙ってしまう
・投資物件に自分自身も住んでいる
・抵当権があるため不動産を売却できない
不動産投資は、株やFxといった金融商品よりも長いスパンで結果を判断する場合が多いでしょう。
転売目的でも買ってすぐ売却することは稀ですし、インカムゲイン型は中長期の運用を前提とする投資です。
この間に多額の資金を投じたことで、赤字となる見込みが高くなっても「引くに引けない」状況に陥っていることが考えられます。
そのため、「損切りするくらいなら、一発逆転を」と考えて、物件を抱え込んでしまうケースもあるでしょう。
また、投資目的で購入したマンションやアパートの一室に自分が住んでいれば、売却を決断することは簡単ではありません。
投資に失敗した上に、「住まいも失う」のはかなり辛い判断となるからです。
他方で、「売却したくても売却できない」ことも少なくありません。ローンを組んで物件を購入したときには、抵当権が設定されているからです。
特に、不動産の評価額がローン残額を下回っている(オーバーローン)の状態では、抵当権者からの承諾を得られずに売却できない場合がほとんどです。
損ギリしたくても不動産を処分できなければ、赤字はさらに累積していきます。
この記事を読んでいる人の中にも「売りたくても売らせてくれないから八方ふさがりだ!」と頭を抱えている人もいるのではないでしょうか。
抵当権が設定された不動産を売却する方法
抵当権が設定された不動産を売却するためには、「抵当権者との協議」が不可欠です。
登記済の抵当権は、第三者(購入者)に対しても主張することができる権利だからです。
物件の購入者が「抵当権ごと引き受けてくれる」というのであれば、売却は不可能ではありません。
しかし、その分だけ売却価格を値切られてしまいます。
オーバーローンの物件では、不動産の評価額よりも高額な抵当権を引き受けることになるので、通常は買い手も見つかりません。
抵当物件の強制競売
不動産投資に失敗すれば、毎月赤字は増えていきます。
そのため、手持ち資金はショートし、ローンの支払いもできなくなる場合がほとんどでしょう。
不動産のローンを滞納すれば、抵当権者(もしくはその保証会社)によって、「抵当権の実行としての強制競売」が行われます。
抵当権実行手続きは、裁判所に申し立てられ、強制競売も民事執行法が定める手続きにしたがって実施されます。
裁判所による強制競売の大まかな流れは次のとおりです。
①債権者(抵当権者からの申立て)
↓
②競売開始決定
↓
③現況調査
↓
④期間入札通知
↓
⑤物件一般公開
↓
⑥期間入札開始
↓
⑦改札
↓
⑧売却許可決定
↓
⑨落札者による代金納付
↓
⑩所有権移転登記
競売開始決定から所有権移転登記までは、最短で6ヶ月、一般的には8~10ヶ月くらいかかります。
案件によっては1年を超えることもあります。
強制競売による売却代金は、すべて抵当権者への配当に充てられます。
他の債権者も配当要求することで手続きに関与することは可能ですが、抵当権者への配当後の残余金がなければ配当を受けられません。
強制競売では「市場価格よりもかなり安い金額」で落札されるのが一般的なので、残余金が生じることはほとんどありません。
当然のことですが、売却代金を不動産投資の損失分や、維持管理費用の滞納分を支払うこともできません。
抵当権を設定してなくても競売されてしまう場合
不動産投資に失敗した場合に、物件が競売にかけられてしまうのは、抵当権を設定しているローンを延滞したときだけではありません。
たとえば、購入した物件の管理費用や修繕積立金を滞納したときにも、競売を申し立てられる可能性があります。
マンション投資を失敗したときには、管理費用・修繕積立金の滞納額が100万円を超えるケースも珍しくないようです。
滞納額が多額になれば、これらを強制回収するために物件の競売が選択されることもあります。
もっとも、抵当権が設定されている物件では、誰が競売の申立ても抵当権者への配当が最優先となります。
そのため、管理会社などは、競売によっても滞納された管理費用などを回収できない場合があります。
しかし、管理費用や修繕積立金の滞納分は、「物件を落札した次の所有者」に請求することができます(そのため、管理費用などを滞納している物件の落札価格は滞納額に応じて低くなります)。
つまり、管理会社にとっては、「いつまでも滞納しない所有者を立ち退かせる」だけでも競売を申し立てる意味があるのです。
「任意売却」なら市場価格に近い値段で売却できる
「任意売却」とは、抵当権者(代位弁済した保証会社)と交渉をして、抵当権を抹消してもらった上で、通常の方法で不動産を売却することをいいます。
「そんな都合の良い話があるのか?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、任意売却に成功すれば、不動産を高値で売れるため、抵当権者にとってもメリットがあるのです。
なお、自己破産した場合であっても、破産管財人の許可・判断に基づいて任意売却が行われることも珍しくありません。
任意売却のメリット
任意売却の最大のメリットは、上でも述べたように、「競売よりも高い価格で不動産を売却できる」ことにあります。
高い価格で売却することで、抵当権者(保証会社)の回収額も大きくなるだけでなく、売却額によっては、その他の負債を圧縮できる場合もあるでしょう。
さらに、売却額以外の点でも次のようなメリットがあります。
・強制競売よりも早く物件を処分できる
・管理費用などの滞納分を売却費用から支払うことができる
・引っ越し時期にも融通を利かせてもらえる(引っ越し代を確保できる)
・不動産投資を失敗したことを周囲に知られるリスクが小さい
競売よりも早く不動産を手放せる可能性があることは、「不動産投資に失敗した」ケースではとても大きな意味があります。
不動産の処分まで維持費用を負担しなければならないからです。
また、すでに管理費や修繕積立金を滞納しているときには、任意売却の費用から支払うこともできます(抵当権者の同意が必要ですが、同意してくれるケースが多いです)。
自分が住んでいる物件の場合には、引き渡しの時期や引っ越し代の工面にも融通を利かせてもらえることがほとんどです(強制競売では売却費用から引っ越し代を工面できません)。
最後に、プライバシーの保護の面でも任意売却の方が優れています。
強制競売では、対象物件の情報は、公告されてしまうので、不動産を競売にかけられたことを周囲の人に知られてしまうリスクを否定できないからです。
任意売却の限界
任意売却は、債務者だけでなく債権者にとってもメリットの大きいWin-Winの売却手段です。
しかし、任意売却にも次のような限界があります。
・ローンの返済を「延滞」しなければならない(ブラックリスト入りする)
・任意売却でも買い手が見つからないこともある
・次順位以降の抵当権が設定されているときには債権者との交渉が難航しやすい
・競売の手続きが進むと任意売却を実施できない
・専門の業者・弁護士に依頼しなければ成功する確率は低い
任意売却を実施するには、「このままでは強制競売で物件を売却せざるを得ない」という状況をつくりだす必要があります。
そうでなければ、「売却のために抵当権を抹消すること」を抵当権者に承諾してもらえないからです。
強制競売となったときには、売却額が被担保債権額に達しなくても、抵当権は強制的に消滅させられてしまうので、「より高値で売れる方法」に同意してもらえる余地が生まれるのです。
しかし、任意売却をしても買い手がなかなか見つからない場合もないわけではありません。
「買い手が現れる可能性が乏しい」ことを理由に、任意売却に応じてもらえないケースも少なくありません。
また、買い手が見つかりそうなケースでも、抵当権者との交渉がうまく行かないケースも考えられます。
特に、第二順位以降の抵当権が設定されているときには、いわゆる「ハンコ代(抵当権抹消に応じるための和解金のようなもの)」の額をめぐって交渉が難航することも珍しくありません。
抵当権者との交渉や、買い手をみつけるのに手間取ってしまえば、強制競売の手続きが進んでしまって、阻止できない状況になってしまうこともあります。
申し立てられた強制競売は、「入札日の前日」までであれば取下げることができます(実務的にはさらにその前日までに抵当権者と合意する必要があるといえます)。
他方で、不動産の購入は「高い買い物」なので、物件をみつけて数日で購入を決める人は多くありません。
以上のように、任意売却は、債権者との交渉、買受人の選定・交渉を短期間でまとめあげる必要があります。
専門知識やスキルのない一般の人が自力で行うのは、ほぼ不可能といえるでしょう。
任意整理については下記ページで詳しく解説をしています。
参考⇒任意整理のメリットとデメリット?債務整理で1番多い手続きの注意点
不動産投資で抱えた多額の借金を解決できるのは「債務整理」
不動産投資に失敗したときには、多額の負債を抱えてしまうことが少なくありません。
不動産投資で作った負債であっても、他の借金と同様に「債務整理」で解決することができます。
上で解説した任意売却で負債額を圧縮できれば、多額の負債を抱えた場合でも「自己破産せずに」解決できることも少なくありません。
任意整理でも解決できる場合
任意整理は、債務整理の方法のうちで、最も負担の小さい手続きです。
他の手続きに比べかかる費用もかなり安く、弁護士・司法書士に依頼すれば「報告を待つだけ」で良い場合がほとんどです。
不動産投資で多額の借金を作ってしまった場合でも、任意整理で解決可能なケースとしては、次の場合が考えられます。
不動産の処分で負債の大部分を返済できた場合
ランニングコストを高利の融資(消費者金融など)で工面した場合
毎月の収入が一定額以上あり、赤字物件を処理できれば、自力で負債は返せる場合
任意整理をすれば、借金に発生する今後の利息は免除してもらえます。
また、返済期間の見直しも行います。
赤字物件を処理できたことで、負債総額が減り、毎月の収支状況も改善されれば、任意整理で解決できるケースも少なくないといえるでしょう。
個人再生(民事再生)すれば負債の多くを免除してもらえる
個人再生は、負債(元金)の一部を免除と原則3年の分割払いを認めてもらえる裁判所の手続きです。
元金カットがあるので、任意整理では解決できないほどの負債を抱えた場合に特に有効です。
個人再生したときに免除してもらえる金額は、個人再生の対象となる負債額(基準債権額)と債務者の財産状況によって異なります。
下の表は、負債額ごとの免除額の最大値をまとめたものです。
負債額(基準債権額) | 免除額(返済しなければならない基準額) |
---|---|
100万円未満 | 免除なし(全額返済) |
100万円~500万円未満 | 最大400万円免除(100万円を返済) |
500万円~1,500万円未満 | 400~1,200万円免除(基準債権額の1/5を返済) |
1,500万円~3,000万円未満 | 1,200~2,700万円免除(300万円を返済) |
3,000万円~5,000万円 | 2,700~4,000万円免除(基準債権額の1/10を返済) |
ただし、保有する積極資産が上記の金額よりも多いときには、財産の程度に応じて、返済しなければならない金額は多くなります(免除額が減ります)。
たとえば、投資用不動産とは別に、ローン完済済みの不動産(マイホーム)があるときには、個人再生しても免除額が少ない(免除されない)場合もあります。
個人再生では、「自己破産した場合の配当総額よりも多い金額を返済しなければならない」からです(清算価値保障の原則)。
マイホームにも住宅ローンがあるときには、「住宅ローン特則」を適用することで、マイホームへの抵当権実行(強制売却)を回避することができます。ただし、住宅ローン特則を利用するときには、次の点に注意が必要です。
住宅ローン特則が適用された住宅ローンは減額してもらえない
住宅ローンに加え、別の担保権が設定されているときには住宅ローン特則を使えない
投資用物件のローンには住宅ローン特則は使えない
住宅ローン特則は、「ローンを全額返す」ことを保証するかわりに、「抵当権の実行を制限」する特別のルールです。
したがって、「2000万円の残ローンを、300万円に免除してもらう」
といったことはできません。
ただし、「期間延長」、「一定期間の元金据え置き(利息のみの支払い)」といった方法で、住宅ローンの返済負担を軽くすることは可能です。
また、不動産投資に失敗したケースでは、住宅ローンに加え「他の担保権が設定されているときには住宅ローン特則を利用できない」ことに注意しなければいけません。
維持費用などを工面するために、不動産担保ローンで借り入れしたときには、住宅ローン特則を利用できないからです。
個人再生については下記ページで詳しく解説をしています。
参考⇒個人再生は家を残せる大きなメリットがあるが2つのデメリットもある
自己破産すれば負債の全部が免除に
任意整理・個人再生では解決できないときには、自己破産をして負債の全額を免除してもらえます。
ただし、この場合には、次の財産は、差し押さえの対象となります。
・99万円を超える現金
・20万円以上の預貯金、有価証券など
・20万円以上の価値のある動産(自動車・貴金属など)
・20万円以上の解約返戻金(生命保険)
・退職金見込み額の一部(退職金見込み額の1/8が20万円以上となる場合)
他方で、生活家電(冷蔵庫・テレビ)や家具(ベッド・タンス)は、華美なものでない限りは差し押さえられません。
このほかに、99万円までの財産は手元に残すことができるので、自己破産したからといって、完全に無一文になるわけではありません。
自己破産は、財産の差押えや、資格制限などのデメリットばかりが意識されがちです。
しかし、借金を全く返済せずに解決できる手続きは自己破産だけです。
ケースによっては、「分割払いしなくてよい自己破産」が最も有利な解決方法であることも少なくありません。
自己破産については下記ページで詳しく解説をしています。
参考⇒自己破産はメリットしかない?家族や子供、仕事にデメリットはないの?
債務整理を依頼すれば取立てから解放される
不動産投資に失敗したときには、あちこちから金策をしたあげく、多くの金融機関から取立てを受けているケースも多いと思います。
負債が返せない人にとって債権者からの取立ては精神的にもかなり辛いものです。
取立てが辛くて、夜逃げや自殺を考える人も少なくありません。
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば、金融機関からの取立ては完全にストップします。
弁護士・司法書士が介入した際には、金融機関は債務者本人に連絡することを法律などで禁止されているからです。
負債を処理し、生活を建て直すためには、「静かな生活」を取り戻すことが特に重要です。
まとめ
不動産投資に失敗してしまったときには多額の負債を抱え、途方に暮れてしまうことも少なくないと思います。
しかし、どんなに多額の負債を抱えてしまった場合でも、解決する方法は必ず用意されています。
「抵当権があるから不動産は売れない」、「借金が多すぎるから自己破産しかない」と思い込んでしまわずに、債務整理の経験が豊富な弁護士・司法書士に相談してみましょう。
任意売却によって、不動産を相応額で処分できれば、自己破産以外の方法で残った負債を返せることも少なくないからです。
通常の借金のケースと同様に、投資行為も早期対処(早めの損ギリ)がとても大切です。
不動産投資に不安があるときには、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談しましょう。